大谷が韓国球界に突き付けた大きな課題。
昨年に行われたプレミア12では大谷翔平(日本ハム)の圧巻の投球が目立った。特に登板した韓国戦では2試合で13回3安打無失点とまさに無敵状態だった。対戦した打者達からは同じアジア人とは思えないと言わせるほどその印象は強烈だったのだ。
優勝監督となったキム・インシクも全試合を振り返り「これからの韓国は大谷のようにスタミナがある投手、球威のある直球を投げる選手を育てなければならない」と話していた。最高の結果で終えたとはいえ、長年に渡り監督を務めてきた名将の目にははっきりと課題が見えていたのだ。
その想いを引き継ぐかのようにある韓国のレジェンド投手が口を開いた。その人物とはキム監督の元で投手コーチを務めたソン・ジンウだ。(※実際の読みはソン・ジヌだがここではハングル表記の通りにする)
映像:現役時代のソン・ジンウ
(出典:You tube https://www.youtube.com/watch?v=q8uhWs22yg0)
ソン・ジンウは韓国通算最多となる210勝を挙げた投手で勝数や投球回、奪三振などほとんどの投手記録を持っている。球界を代表する右腕がソン・ドンヨルなら左腕は彼だと言っても過言ではない。ハンファ(ピングレ)イーグルス一筋で投げ続けたその功績を称えて、球団では現役時代の背番号21を永久欠番にしている。引退後は巨人でコーチ研修を受けた後、古巣で投手コーチを歴任。今季から前田健太(広島)とチームメイトになるリュ・ヒョンジン(ドジャース)を指導した。
プレミア12での大谷の投球を見て「化け物であり、オ・スンファンの直球よりも球質がよい」と称賛を送っていた。同時に大谷のようなエースの存在感は韓国にとって大きなものだったと語っている。その意味はキム監督が話した内容に通じる。
まず挙げたのは野球環境の差だ。高校野球を比べてみると日本が全国で約4000校あるのに対し、韓国ではわずかに60校ほどしかない。もし、日本と同等の数があればより良い選手が出てくるとしたうえで難しいのはどのように育成するべきなのかということだ。
その方法の1つとしたのは徹底的な投手分業制の確立だという。日本球界ではほぼされているが、向こうではなかなかできていない。チーム事情により今まで先発で投げてきた投手が中継ぎにまわったり、急に抑えになったりする場合が多いという。若手選手も2軍で先発投手として育成されてきても昇格すれば中継ぎとして登板するというのだ。ソン・ジンウは1,2軍のコーチ達が連携して選手を育てていくべきと語っている。まずは投手の役割を固定させることが第一歩だそうだ。
次にどうすればより多くのファンを球場に呼ぶことができるかについて言及した。ちなみに昨年はリーグ全体で762万人が現地で観戦した。この数字は過去最高であり、試合数が従来の128から144に増えたことも影響している。
選手のプレーを高めることはもちろんのこと、各球団の先発陣強化とFA移籍した選手の奮起を挙げた。この1年、ブルペン陣は全体的に強化されたそうだが、大谷のように1人で多くの観客を呼べる先発投手がいないという。
ここで札幌ドームへ試合を観に行くと考えてみよう。もちろん、中田翔や陽岱鋼などスター選手は数多くいるが、今回は大谷目当てで行くことにする。彼に何を期待するだろうか。160キロの直球や140キロ超のフォーク、二刀流や奪三振ショーなど現地で見てみたいものは多い。
韓国ではプレミア12開幕戦で先発したキム・グァンヒョン(SK)をはじめ、阪神が調査すると表明しているヤン・ヒョンジョン(KIA)などエースと呼ばれている投手はもちろん人気なのだが、1人でファンを呼べるかといえばそれは疑問符だ。FA選手ももらう年俸の割には活躍していないという。そこは日本と同じ状況だ。
KBOの会長も新年のあいさつで今年はファンに面白い野球を魅せると言っていた。ソン・ジンウはこのことも踏まえて指摘したのだろう。
彼は投手出身だからこそ、先発のことを気にしているが今年は野手のスター選手が減ることになる。50発男のパク・ビョンホ(ツインズ)やプレミア12でMVPになったキム・ヒョンス(オリオールズ)の移籍が関係する。以前は大会に出場した野手のうち5人がメジャー移籍するのではないかと言われていた。今のところ2人だけだが、彼らが所属していたネクセンとトゥサンはファンが減るのではないかとされている。
今季、リーグ全体で目標とする観客動員数は800万人だ。球界を代表する選手を失った今、どのような企画を考えるのだろうか。2人をはじめ、リュ・ヒョンジンやカン・ジョンホ、チュ・シンスらも同じ舞台で戦うことになる。ある媒体ではKBOよりもMLBを観る人が増えるのではないかと予想しているところもある。
投手や観客数などソン・ジンウが指摘することは的確で正しい。これからが正念場といったところだ。今季はバルディリスがサムソンでプレーする。大げさかもしれないが、どうせなら日本のファンも呼べるようなイベントを期待したい。
大谷に刺激を受けた韓国球界。これからの真価(進化)が問われる。
出典元:
http://sports.news.naver.com/kbaseball/news/read.nhn?oid=111&aid=0000444973