台湾のレジェンドの最後の国際試合。
3月5,6日に行われる侍ジャパンの強化試合。対戦する台湾代表の27人の選手が発表された。投手では通算124勝の潘威倫(統一)をはじめ、横浜に在籍した王溢正(Lamigo)も参加する。昨年、実績を残した選手達が数多く出場する。
その一方で野手も負けていない。先日、徳島インディゴソックスに入団した張泰山と同様に台湾の顔と言われるビックネームも名を連ねた。
写真:3月の強化試合に参加する首脳陣、選手一覧
(出典:CPBL 中華職棒 https://www.facebook.com/heartbaseball/?fref=ts)
ここでは野手を簡単に紹介する。
捕手
・林泓育(Lamigo 右投右打)
チームの4番打者として打線をけん引し、昨季は24本塁打を放った。広角に打てる打力も魅力的だ。捕手の能力としては平凡的で、リードが単調になりがちなところがある。4年前の復興支援試合では澤村拓一(巨人)からも本塁打を放っている。今試合でも中心打者になりうる。打率.353 本塁打24 打点101
・林琨笙(義大 右投右打)
チームの中では2番手捕手にあたる。長打力はないが、バントや粘り打ちなど小技がうまく、投手のスタミナをじわじわと奪う。いきなり1試合で4安打と爆発したりとムラがあるが、意外性があり1番怖い打者かもしれない。
打率.336 本塁打1 打点17
・陳家駒(中信兄弟 右投左打)
昨季からレギュラーを掴んだ3年目の選手。以前はレッドソックスのマイナーに所属しており、強肩がウリだった。現在は送球にバラつきがあり不安定なところも。打撃では2年で放った13本塁打のうちの2本が試合を決めるサヨナラ弾と、ここぞという場面にはめっぽう強い。打率.268 本塁打8 打点32
内野手
・陳鏞基(統一 右投右打)
チームのレギュラー遊撃手。プレミア12では三塁を守っていたが、内野ならどこでも守れる器用さと守備範囲の広さが武器だ。14年にはベストナインに選ばれたこともある。打撃では柳田悠岐(ソフトバンク)にもひけをとらないフルスイングでよく球を場外まで飛ばす。下位打線に入ることが多く、この選手が後に控えていると厚みが増す。打率.278 本塁打14 打点50
・王勝偉(中信兄弟 右投右打)
兄弟の二塁を守るレギュラー選手。12年にはゴールデングラブ賞、13年に盗塁王を獲得し、昨年にはサイクルヒットを達成している。走攻守3拍子が揃っており、1番打者が最適か。実はバントもうまく、何を仕掛けてくるかわからない。日付を超える長時間となった台湾シリーズ第3戦では試合を決めるサヨナラ安打を放っている。打率.291 本塁打6 打点40
・郭嚴文(Lamigo 右投左打)
チーム不動の二塁手。プレミア12では主に2番打者として活躍し、イタリア戦では逆方向に本塁打を放っていた。14年に行われた千葉ロッテとの交流試合でも本塁打を放ち、MVPを獲得している。悪球打ちで有名で特に低めの球に強い。出塁によって打線に勢いを与えるキーマン的存在だ。打率.297 本塁打9 打点71
・陳俊秀(Lamigo 右投右打)
Lamigo入団前はインディアンズに所属していた。捕手をはじめ、一塁や外野など色々なポジションを守った経験がある。今回は一塁として登録されているのだろう。安打製造機で左右どこにでも打ち分けることができる。昨年はチームのクリーンナップを担い、優勝の原動力となった。打率.335 本塁打25 打点118
・林智勝(中信兄弟 右投右打)
昨年、トリプルスリーを達成したことで日本でも有名になった台湾球界の顔。一時は千葉ロッテに入団するのではないかと噂されたほどだ。プレミア12のキューバ戦では勝利に導く決勝3ランを放ち、ファンを熱狂させた。大会の本塁打王にも輝き、その実力は世界中に証明済み。 打率.380 本塁打31 打点124
・余德龍(Lamigo 右投右打)
台湾の二刀流選手。現在はほとんど野手として出場しているが14年には2試合に登板し、無失点に抑えている。投手としての最速は142キロだ。昨年は21盗塁を記録し、主に足で相手投手を揺さぶっていた。打率.301 本塁打1 打点34
外野手
・張正偉(中信兄弟 左投左打)
チームの1番打者として活躍する台湾球界きってのチャンスメーカー。走塁技術に長けており、12年には連盟記録となる15三塁打を記録した。6年連続100安打と安定した成績を残し続けている。上位打線に入ってくる可能性が高い。打率.335 本塁打2 打点41
・王柏融(Lamigo 右投左打)
昨年、ドラフト1位で入団し後期シーズンを沸かせた大型選手。29試合で9本塁打と呂明賜(元巨人)を彷彿させる豪快な打撃でプレミア12に出場することになった。恐怖の9番打者として活躍し今後も期待される有望な選手。以前は大谷翔平(日本ハム)や藤浪晋太郎(阪神)らと対戦したいと発言していた。打率.324 本塁打9 打点29
・周思齊(中信兄弟 左投左打)
12年の台湾シリーズMVPになった選手。13年WBCでは田中将大(ヤンキース)と対戦し、一時は勝ち越しとなる適時打を放っている。張正偉と同じく、安打製造機であり、走塁がうまい。昨年は一昨年とほぼ同じ試合出場数でありながら打率を急上昇させ、チームをけん引した。二塁打が多いのが特徴。打率.349 本塁打15 打点79
・高國輝(義大 右投右打)
昨年は球界新記録となる39本塁打と107得点を記録した。変化球、特にスライダー打ちが得意で容易に彼に投げてはいけない。この活躍の勢いでプレミア12で5番打者を任されるも絶不調で打率1割台に終わった。今回の試合で雪辱を果たそうと意気込んでいる。打率.324 本塁打39 打点110
・陽耀勳(Lamigo 左投左打)
言わずと知れた陽岱鋼(日本ハム)の兄。昨年は野手として奇跡の復活を果たし、台湾シリーズ第1戦ではMVPに第5戦では本塁打を放つなど優勝の立役者となった。ウインターリーグにも参加し、広角に打ち分ける打撃で打線をけん引していた。打率.425 安打37 打点10
・劉芙豪(統一 右投右打)
今季13年目のベテラン選手。昨年は出場機会が激減したものの、61試合で15本塁打と一昨年の109試合で11本の記録を抜く、驚異の記録を残した。通算1000本安打も記録し、打撃も好調さを維持している。10年にはゴールデングラブとベストナインを獲得し、11年には1試合5安打を放ったこともある。打率.274 本塁打15 打点53
・張建銘(義大 左投左打)
リトルリーグ時代から国際試合の経験が豊富な選手。7年連続100安打とともに14年にはゴールデングラブを受賞するなどチームの顔として活躍している。強肩として知られ、レーザービームを何度も披露し、チームのピンチを救っている。ちなみに主に右翼を守る。打率.342 本塁打11 打点74
・陳金鋒(Lamigo 右投右打)
台湾人初のメジャーリーガーで今季限りでの引退を表明しているレジェンド選手。近年は代打か指名打者での出場に限られ本塁打もないが、抜群の人間性で陽岱鋼をはじめ、多くの選手から尊敬されている。今回は台湾代表のキャプテンに選ばれると同時に彼にとって最後の国際試合となる。打率.200 安打9 打点7
昨年のプレミア12に出場したのは7人だ。注意したいのは林智勝と郭嚴文、王柏融の3人だ。実際に彼らを球場で見たのだが、ミートとパワーに優れ、自分の得意球が来るまでひたすら粘っていた。野手も活躍している選手が数多く、人気だけの選出ではないことが証明されている。
1番の目玉は今季で引退する陳金鋒だろう。以前から強化試合に出場するのか本人の決断が注目されていた。この決定によって台湾から観に行きたいというファンの声が数多く上がっている。現地の旅行会社では観戦ツアーを企画しており、人気沸騰中だ。
侍ジャパンにとっては17年WBCに向けて大事な試合となる。一方の台湾にとっても同じように強化試合になるがレジェンド打者の出場で1大イベントとなった。両国のチーム強化と交流が目的の2日間はただの試合ではなくなったのだ。
3月の対戦の意味はとても大きい。決戦地は名古屋と大阪だ。日本もうかうかしていられない。台湾は本気で挑んでくるのだから。