南の島での面白い出会い。
つい1週間前まで石垣島に行っていた。千葉ロッテマリーンズとLamigoモンキーズとの交流試合だ。一昨年は台湾で同カードが開催されている。その時は2勝1敗でLamigoが勝ち越した。今回は1勝1敗の引き分けに終わっている。
人生初の沖縄県ということで球場に行く道中で迷っていると、面白いファンと出会った。本人からの許可も出ているので紹介したい。女性ファンなのだが、これまた目的が想像を絶するものだった。名前は佐々木愛さんという。
写真:石垣島で出会った佐々木愛さん
現在、23歳で管理栄養士をしているという。福岡県出身ということもあり、テレビをつければソフトバンクホークスの試合が放送されているという日常だったようだ。だが、本人はなぜかダイエーホークス時代のことをよく覚えている。ルールはボールカウントの種類しか知らないようだが、過去にヤクオフドームで売り子をしていた経験があり野球とそれなりには繋がりがある。
特技は13年間続けている空手だ。高校時代ではキャプテンを務め、インターハイにも出場した。団体5位という実績を持っている。彼女は自主練とキャンプ視察を並行して行っていた強者なのだ。
そんな彼女がなぜ、石垣島に来たのか。ある1人の選手の存在がきっかけだそうだ。それは14日の第2戦に先発した川満寛弥。九州共立大学から入団し、今年で4年目を迎える左腕だ。ここまで1軍登板はないが、約4年に渡って彼に注目しているという。
写真:14日の試合に先発した川満寛弥
きっかけは友人に川満が投げている写真を見せてもらったことから始まる。彼女が1番惹かれたのは投げる姿ではなく、笑顔だ。そこから存在が気になり色々と情報を集めていた。今回の石垣島も川満のためだけに来たという。
14日の試合では自身がLamigo側の三塁側で試合を観ている間、彼女はバックネット裏で真正面から川満の投球をみていた。この日、雨の影響もあったのか途中で投球リズムが崩れて降板した。佐々木さんは生で投げている姿をみて喜ぶ一方でチームのある状況に疑問を抱いていた。
川満は立ち上がりに失点したが、何とか抑えてベンチに戻る際に見せたチームメイトの態度だ。普通ならば一言くらい声をかけるべきのところを誰一人としてかけなかったという。これは空手の世界では考えられないことだそうだ。本人から聞いたのだが、空手で大事なことは3つある。それは声を出すこと、気迫、必死さだ。
交流試合だったという要因もあるかもしれない。ロッテの選手達からはこれら3つを何も感じることがなかったのだ。一言「闘う気持ちが見えなかった」と語っている。空手ではいくら調子が悪くても技(パフォーマンス)を出せるようにならなければならない。これは野球だけではなく、他のスポーツにも通じる。
同時に試合や練習中の選手達は紳士的で個性がないとはっきりと言っていた。ロッテといえば12球団の中でも1,2位を争うほどの応援が有名ではあるが、プレーには胸を熱くするようなものがなかった。確かにLamigoは応援では音楽を使い、ダンスもあったことで盛り上がっていたものの、ロッテはとても静かだった。
佐々木さんはもし、選手に伝えることがあるとしたら「誰かに見られていることを意識してほしい」と言っていた。前日の13日に彼女は自身に空手の型を見せてくれた。真剣な表情はもちろんのこと、1つ1つの動きにはキレがあった。これも会場にいる多くの人から実演する動きを見られている。野球でも同じだ。公式戦ではないとはいえ、いつでもファンに魅せるプレーをしなければ球場に多くの人を呼ぶことはできない。
空手家から見た視点は的確で話を聞いている自身でもグサグサくるような内容ばかりだった。爽やかさが足りないチーム、あまり野球と接していないファンからこのように言われるのは問題がある。球団はこうしたファンの声に耳を傾けるべきだ。
川満の追っかけではなく、チーム全体を見ていた彼女。自身が帰った15日以降も石垣島に滞在していた。今季から移籍してきたジェイソン・スタンリッジが通訳と2人で歩いていた姿を何度も見かけていたことから彼に声をかけたという。何かプレゼントされたそうで嬉しいと報告があった。そんな気遣いもできる新しい野球ファンもいるのだ。
あくまでも川満が第1であるが「投手が失点しても野手が声をかけるような雰囲気づくり」をチームに求めている。佐々木さんは彼の笑顔を見る機会を望んでいる。本人もここまで期待されると奮起しなければならない。1軍でキャンプを過ごした川満が今季、先発ローテーションに入ってくると心強い。その反対に大卒の4年目は勝負の年でもある。結果を出さなければクビになる。
ちなみに彼女が着ているTシャツは自前だそうだ。ここまでするファンも珍しいのではないか。今回の出会いに感謝し、佐々木さんの今後を応援していきたい。