強化も交流も表向きだけ。
侍ジャパンの強化試合が終わった。第2戦は日本が9得点で台湾に連勝した。この場合はメディアは「快勝」と書き立てる。結果だけ見ればそうなる。しかし今回は相手の犯したエラーの隙をついて変わった試合の流れに乗って得点しただけだ。言葉の意味を考えると相手に1点も与えず、2桁安打と得点でこてんぱんにするようなことをいう。極端なことを言えば10対0だ。3失点している以上、決して「快勝」ではないと考えている。
会場となった京セラドーム大阪も前日のナゴヤドームに引き続き、当日券販売なしの試合となった。つまり、席がすべて埋まっているということになる。ちょうど昼には甲子園球場で阪神のオープン戦が開催されていたこともあり、ダブルヘッダーで観に来たファンも多かった。小久保裕紀監督の批判が続く中でも野球好きな人は球場に足を運ぶのだ。
自身はこれを見て満員御礼のお知らせがスクリーン上に表示されることを期待した。ナゴヤでは残念な結果だっただけに今度こそ裏切られることはないだろうと思っていた。
しかし、試合が始まって中盤の4回に入ったところで撮影した球場の様子はこれだ。
空席が目立つ。試合の行方が決まっている訳でもない。急に観戦できなくなってしまった人は仕方がないとしてもこれはひどい。中には転売している人もいるだろうが、値段が上がっても買って行こうと思う人がいなかったということだ。この状態なのになぜ当日券を販売しないのか。運営側が注目試合だと見栄をはっているのと同じだ。プロスポーツの収入源においてチケットやグッズは重要な役割を担う。野球は商業、もちろんお金がほしい。なら販売すべきなのだ。現地では券を売らない代わりに球場内外のあちこちで侍ジャパングッズを販売していた。そんなに売ってどうするのかわからない。来年のWBCではもちろんのこと出場選手は変わる。その都度、新商品を発表することで売り上げも上がることだろう。それならそれでもよいのだが、ファンが1番楽しみにしている試合はどうなのか。
日本では今回の試合を「強化試合」と呼ぶのに対し、台湾では「交流試合」と呼んでいる。本当にWBCを見据えているのなら1軍選手を出さずに1軍半か2軍の選手を出せばよいのではないか。しかしそれではファンを球場に呼ぶことができないために仕方なく集めているのだ。本当に野球が好きなファンなら足を運ぶはずだ。もちろん、メディア側も盛り上げるために選手情報を提供するなどするべきはある。
一方の台湾は4番の陳金鋒(Lamigo)の代表引退試合ということもあって現地では注目されてきた。航空会社のチャイナエアラインも協力して選手だけではなく、ファンや報道関係者も一緒に来日した。よく仕事ではONとOFFの切り替えが大事と言われているが、選手達の様子を追っているとどの選手もまぶしすぎる笑顔が目立っている。今回の敗戦の意味をよく考えてほしい。たらればは禁物だというが、4回の菊池涼介(広島)のセーフティバントの際に起こった2つのエラーは完全に試合の流れを変えた。これらがなければ接戦だったかもしれない。元々、1球に一喜一憂するファンが特徴だが、選手も同様だ。洪一中監督は「選手達の勝ちへの意識がいつもより高かった」とコメントを残しているが、自身は現地にいてもそのように見えなかった。
これは台湾の掲示板の情報だが、台湾は21世紀になってから日本戦において1度も勝利したことがない。WBCやオリンピックなど対戦成績は成績は0勝9敗だ。しかもすべて3点以内で抑えられている。この現実を直視したほうがよい。強くなろうという気持ちがまったく見えないのだ。日本から多くのことを学びたいという貪欲さはよいのだが、いつまでそのようなことを言っているのか。まずは早急に世代交代が必要。10年前の4番も今回の4番も同じ陳金鋒だ。日本が選手が大会ごとに選手が変わっているのに対し、ほぼ変わっていない。
決して台湾をけなす訳ではない。侍ジャパンが今後も「強化試合」と銘打って試合を続けていくのならば名前に相応する相手と試合をすべきだ。交流試合をしたいのならキャンプ中かウインターリーグの期間を利用すればよい。同じような相手としか試合ができないのはその国の日程もあるが、NPB側の人脈が少ないことを露呈している。
本来ならば国際試合は両国の「色」を出しながら戦うはずだ。台湾のファンは球場の制限で普段の盛大な応援はできなかっただけではなく。チームの呼称問題でも揺れていた。すべて日本が主導で仕組んだことだ。これらは報道されていない。
このようなことが続くのならばこの時期の試合はするべきではない。当日券を売らない、対戦相手の意見を聞かない、試合をする意義を発表しない。グッズ収入は成功したかもしれないが、喜ぶ前に満員にならなかった現実をみてほしい。
自身は国際試合自体は嫌ではない、むしろ大興奮するほど好きだ。これからもできる限り現地観戦は続けていく。対戦した台湾にはより勝ちへの執念を見せてほしいというエールを送り、侍ジャパンには不透明な部分を明らかにし、誰が出てもガチンコ勝負ができるような魅力ある試合とオープンな運営をしてほしい。