【書籍紹介】韓国球界の伝え手が書いたコラム集『野球愛は日韓をつなぐ』

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外から見る視点を。

今オフのFA市場で目玉の1人である陽岱鋼の巨人移籍はもうすぐだ。既に台湾メディアでは明日9日に正式発表されると予想され、報道合戦が展開中だ。次はだれが巨人からいなくなるのか、という議論が始まる。日本でプロ野球の話題が尽きることがない。

お隣の韓国では最近、肘の調子が悪いと言われていたキム・グァンヒョン(SK)が手術を受けると発表された。本来ならばFAでメジャー入りする予定だったが、チーム残留となった。近年は韓国球界で日本人コーチが活躍しているが、なかなか現地の情報は入ってこない。

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写真:室井昌也氏の新刊
 

日本で韓国球界を伝える先駆者といえば、ライターの室井昌也氏だ。彼は03年から日本の野球ファン向けに観戦ツアーを企画。その翌年からは日本語で韓国プロ野球選手名鑑を発行している。06年からは「スポーツ朝鮮」でコラムを書いている。既にその本数は300回以上を越えており、表彰もされた経験もある。

今回、発売された新刊はこれまでのコラムを日本語で再編集したもの。来日した韓国人選手の話や日本人コーチの話、国際大会の話などが記載されている。海外出身者が韓国の媒体でコラムを書いていることは異例のことであり、室井氏の内容は重宝されているのだ。

全97本のコラムの中で特に気になったものは国際大会の話題だ。それはアジアシリーズについてだ。

アジアシリーズといえば13年を最後に開催中止になった大会で、7回のうち5回が日本チームが優勝している。当初はアジアNo.1を決めるものとされていたが、途中でオーストラリアやヨーロッパが参加するなど少しずつ目的が変わっていった。日本では毎年のように「罰ゲームだ」と言われ、開催意義が疑問視されていた。

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室井氏のコラムによると韓国国内でも日本同様、やる気がない声が挙がっていたという。08年に出場したSKは台湾・統一ライオンズに、12年はサムソンライオンズがLamigoモンキーズに敗れたことで注目度が落ちたとも言われている。たとえ優勝したとしてもカップと栄冠だけであって選手にとって具体的にご褒美はなかった。

FA取得までの期間を短縮する案もあったが実現には至らなかった。今年オフは台湾で大会復活に向けて話し合いが行われる予定も進展がまったくない。

以前、韓国の野球雑誌では「韓国は東京五輪までにアジア球界のリーダーとなる」と書かれていたことがあったものの、最近発覚した八百長や選手の不祥事もあってとてもアジア全体をけん引できるとは思えない。また、日本側も具体的な野球の国際化に向けた行動をしていない。

海外の野球を追う者とすれば国際大会があまり盛り上がっていない現状は悲しい。来年のWBCでは各国が数多くのメジャーリーガーが出場することが決まっており、これまでも注目度が高まるが第4回を最後に大会がなくなる可能性もある。

となると世代別のワールドカップやプレミア12が残る。日本と同じアジア球界全体のレベルアップのための試合の開催や競技普及を進める必要がある。韓国球界の専門家から見た国際化に向けた提案がこの新刊には書かれている。

この本は日本と韓国を野球でつなぐ貴重なものとなる。ぜひ1度、手にとって読んでみてほしい。 

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