秘境でもファンは必ずいる。
6月29日から1泊2日の弾丸で行った韓国野球旅のレポートをしている。前日に見に行ったロッテジャイアンツ対LGツインズの試合は雨天中止となり釜山ではチキンとビールのセット「チメク」を楽しんだのみとなった。気を取り直して韓国遠征初日を迎えたソフトバンク3軍が試合をするソウルのコヤン(高陽)市に向かった。
南から北への移動。新幹線の「KTX」も選択肢にあったが、敢えて飛行機での移動を選んだ。日本円にしってわずか2600円ほど安かったが機材の遅れか何かで1時間出発が遅れてしまい、金浦空港に到着したのが11時で試合開始の13時にはギリギリの状態だった。ちなみに初戦の相手、NCダイノス2軍のコヤンダイノスの球場はソウル地下鉄3号線の終点である「テファ」(大化)にある。
今回は金浦空港から乗り継いで向かったため、この駅までは約40分から50分ほどかかっただろうか。韓国野球のジャーナリスト、室井昌也氏によれば2軍球場のほとんどはアクセスが悪く、訪れることは困難だという。その中でも今回のコヤンの球場は比較的足を運びやすい。
このテファ駅に着く前、地下鉄3号線の路線図を見ていると次のような駅名を見つけた。
そう「大谷」駅だ。韓国では大谷翔平のことを「怪物」や「日本の化け物」と称しているがしっかりと「オオタニ」と呼んでいる。この駅名は「漢字語」と言われる韓国語の単語を覚えるためにとても重要なもので韓国独自の読み方をしている。この漢字語を覚えることができればパズルのように新しい単語を知ることができるのだ。大谷は漢字語の読み方で「テゴク」という。
テファ駅から球場までは歩いて約15分。地上に出るとコヤンダイノスを推すものが並んでいたのだ。これはわかりやすい目印となる。
コヤン市は市全体が猫のキャラクターを推している。なぜなら韓国語で猫は「コヤンイ」といい、発音が同じだからだ。1軍は「NCダイノス」で2軍は「コヤンダイノス」と名前が違っている。コヤンはチームバスもこの猫のキャラクターが描かれている。
球団名が恐竜でキャラクターが猫というのはとても違和感があるがこれもこれで面白い。
球場付近には警察関係の施設が。また、サブグランドだけではなくパークゴルフもできる場所もあるのだ。中に入ると簡易的にストラックアウトや写真撮影場所など2軍本拠地でありながらちょっとしたアトラクション施設になっている。
元々、この球場は約3年目まで独立球団の高陽ワンダーズが本拠地として使用していたところだった。この球団はハンファイーグルの監督を辞任したキム・ソングン氏を監督に据え、コーチにはサムソン・リー(元中日)、選手としては小林亮寛(元千葉ロッテ)やマキシモ・ネルソン(元中日)らが在籍していた。ワンダーズが解散した後にコヤンが継続して球場を使っているのだ。
球場の中に入ると既に試合は始まっていた。平日の昼間にもかかわらず予想外のファンの多さに驚いた。
ファンの中には韓国人でありながら選手の応援歌を永遠に歌う人がおり、7回裏には「いざゆけ若鷹軍団」を1人で熱唱していた。2軍球場のため、1軍のようなチアリーダーもいなかったがこのファンのおかげでまるでヤフオクドームのような雰囲気を味わうことができた。
日本だけではなく、韓国のファンも野球があればどこにでも行くのだ。野球好きは万国共通。アクセスの悪さなどそんなものは大きな障害にはならない。