まずは終了。
11月16日から19日までの間に行われていたアジアプロ野球チャンピオンシップ(当ブログではACSと表記)が無事に終了、侍ジャパンが3戦全勝で優勝し歓喜の時を迎えた。自身は全試合を現地観戦し、アジアの野球文化を目の当たりにしてきた。楽しむのは試合だけではない、球場を訪れるファンも多種多様だった。
今大会では以前行われたアジアシリーズとは違い、各リーグの優勝チームが出場するのではなくU24やプロ3年目という20年東京五輪で主力となりうる選手達でチームが構成されていたことだ。「アジアプロ野球」という名前である以上、出場国は日本や韓国、台湾に限られるのは仕方のないことだったが、新たな試みがファンでもわかる形で示されていた。
しかし、いくつか違和感を感じた。
1. 配布された名鑑とバックスクリーン上での選手表記の違い
これまではシーズンで活躍した選手やネームバリューがある選手が試合に出ていた国際試合も今回は若手が出場することもあって球場を訪れたファンの中には全く選手のことがわからないという人もいた。実際にドーム周辺を歩いていたときや試合中でも「この試合で出ている選手を知らない」という話や「大会意義がわからない」という声があった。球場に入ると入り口では選手名鑑新聞を配布していたものの、日本は今季成績とコメントが載っている一方で韓国や台湾の選手は成績しかなかった。
メディアでは日本球界在籍中の選手や王柏融(ワン・ボーロン/Lamigo)、イ・ジョンフ(ネクセン)が紹介されていたが、その他は個人ブログやサイトで収集するしかなかった。出場チームが「3」だけしかないことあって冊子にして売り出すことは難しかったとは思うが、現地に来ていたファンは購入していたのではないか。ここで違和感を感じたのは配布された名鑑の選手名表記はすべて漢字、一方でバックスクリーンは英文だったこと。そのため、ファンは球場で選手名がコールされた際は背番号を頼りに選手名を探さなければならなかった。名鑑の表記を漢字か英文に統一すべきだったと思う。
2. 寂しい日本側の応援ステージ
今回は初の試みとして内野席に応援ステージを設けた。これは韓国、台湾球界において応援の中心が内野であり、応援団長やチアリーダーがダンスをしながらファンと一体となっているからだ。
日本での応援の中心はご存知の通り外野席だ。主に韓国は応援ステッキ、台湾は音楽をかけながら応援をするのに対して日本は楽器を使いながら盛り上げていく。それに対し内野席でも叫んだり手拍子をするファンはいるが、どちらかといえば試合をゆっくり見たい人用といえるだろう。
日本は11球団から選抜された特別チアガールが登場した。ダンスをして応援の雰囲気を盛り上げていることはよいのだが、なぜ外野で流れている応援歌に合わせて内野で踊る必要があったのか。三塁側から見ていて奇妙な光景だった。韓国や台湾は近くに団長がいるためファンに応援の仕方を教えながら場を仕切っている。そのため、安心して声援を送ることができる。しかし、あくまでも見ていた印象でしかないが日本は「踊らされている」ようだった。
チア応援席があるからといって日本はムリをしてまで内野ステージを使う必要はなかったのではないか。国際試合は選手のプレーはもちろんのこと、こうした野球文化の違いを体験する場でもある。普段から両チームの応援を熟知している人もいれば現地観戦を通じて韓国や台湾の応援を初めてみた人もいることだろう。韓国と台湾は「普段通り」の応援形式をとっていたが、日本は全く違う形をとっていた。確かにステージがガラ空きになるのは寂しいこと。それが難しいのであれば、団長や演奏者を数人を内野席に呼んで場を仕切るべきだった。
3. 発表された観客動員数
この4試合で発表された観客動員数は以下の通りだった。
16日 日本 対 韓国・・・32,815人
17日 韓国 対 台湾・・・6,040人
18日 台湾 対 日本・・・35,473人
19日 日本 対 韓国・・・30,498人
やはりホームということもあって日本戦はそれなりに入っていたとは思う。しかし、チケットの売り上げは悪く、招待券が数多くバラまかれたと聞いている。実際に自身は初日の韓国戦は招待券で入場した(別に自身で購入したものはあった)。そのために多くの席種が転売サイトで出品されていた。しかも定価割れしているものが多く本当は悪いことではあるが、こうしたところで購入したほうが金額的にはお得だった。
当日券をみても初日の韓国戦は試合開始1時間前の時点で完売していたのはエキサイトシートぐらいだった。もちろんある程度は用意しているとはいえ、これは酷かった。自身は以前から友人の分の席を購入していたこともあってチア応援席のほかに内野自由席など3種類の席のチケットを持っていたが、諸事情によりムダになってしまったものもあった。そのために手元に未だに残っている。
もちろん中には事情で観戦できなかった人もいるだろう。それでも日本戦では解放していた2階や3階席にも空席が目立っていた。盛っているのではないか、という違和感を強く感じる。
以上のように違和感を書いてみた。この時期の国際大会はNPBエンタープライズが資金調達をする場だ。試合をやれば相手がどこであろうとスポンサーがつくこともあってある程度の収益を得ることができる。だが、今大会で野球関係者やファンから「大会の開催意義がわからない」と言われている時点で注目度がないことが明らかだ。
球場に来ている大部分のファンは裏事情は抜きにして試合を楽しみに来ているはずだ。果たして中の人で何人がこの大会を行う意味を説明できるだろうか。大会側はこれを明確にすべきだった。ただ「国際大会をやります」ではわからない。本番前には
侍ジャパンの公式サイトで選手の紹介も行ってはいたが、書き手にすべて丸投げしているようで本当の中の人は何もしていないのではないか。色々と疑問に思うことがある。
このアジアプロ野球チャンピオンシップは今後、4年に1度行われるという。果たして次はどのような大会運営になるのだろうか。継続していくことを願う。