【野球旅回顧】2019年9月-U18ワールドカップ

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写真:会場となったキジャンの大会本部

ここまでラオス、香港、スリランカと3ヶ国の野球旅を振り返った。次は4ヶ国目、9月に開催されたU18ワールドカップだ。会場は韓国・釜山にある「キジャン」という地域。ここには球場が4つあり、合宿や練習にぴったりといえる。ちなみに2016年には女子野球ワールドカップも行われたところでもある。

この大会は夏の甲子園で活躍した選手達が参加していたこともあり、とても注目度が高い大会でもあった。2018年9月に宮崎であったU18アジア選手権で日本が3位に終わったこともあり、周囲からは世界一が至上命題とされていた。ビジネスであることは理解しているのだが、選手にとてつもないプレッシャーをかけていることがとても気になっていた。

最初はテレビ観戦のみに収める予定だったものの、現地入りした友人からのレポートを読んでから「現地の雰囲気を感じたい」という理由で大会最後の2日間だけ見に行くことに決めた。そこからが長い道のりとなる。

まず羽田空港から韓国・仁川空港まで約1時間半。そこからソウルまでの移動し、現地の新幹線・KTXで釜山まで行くこと、ここまで計4時間40分。次は地下鉄とローカル線を乗り継いで球場の最寄駅の「日光(イルグァン)」へ。最後はタクシーで10分ほどで到着した。最終的には会場まで6時間ほどかかっただろうか。

到着すると、ちょうど日本がオーストラリアと対戦していた。

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写真:会場到着直後のスコアボード

日本が試合をしていた球場は内外野に観戦席があったが、内野はすべて席が埋まっており、日本のベンチ周辺を観客が取り囲んでいた。選手の親御さんはもちろん、選手見たさに集まったファンも多数確認できた。この試合は日本が敗れ、大会5位が決まった。

試合終了後こそ、自身が現地で見たかった光景となる。監督のテレビ向けインタビューが終わると次は新聞やネット媒体用の会見場に移動。そのときはまるで大名行列のように首脳陣や選手、ファンがほぼ同時に動いていた。会見開始後の様子がこれである。

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写真:試合終了後の日本代表による会見の様子

自身はこの様子を後ろから黙って見ていた。日本で大きな注目を浴びていて嬉しい一方で、違和感があった。同時に「他国のメディアはどう動いているのだろう」という疑問を抱いた。この会場では4面の球場があるため、同時進行で試合が行われていた。当時、日本戦の隣で韓国とアメリカが戦っていた。試合終了後の韓国メディアによる取材の様子がこれだ。

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写真:韓国メディアによる取材の様子

奥に韓国の監督がいるのだが、話を聞いていた記者はわずか5人ほど。その隣では日本の取材が続いていたのでメディア数の差に驚いたことを覚えている。実際に韓国の中継車も見かけたが、夜にテレビをつけてもU18ワールドカップのことはあまり取り上げられていなかった。

この大会は台湾がアメリカを2-1で下して優勝を飾った。決勝進出を逃した日韓両国のメディアがどれほど試合を見るかが気になっていた。その結果、数人確認できた。試合開始前、アメリカ人のファンが応援フラッグを周囲の人に配っていた。そのおかげもあって、応援はかなり盛り上がっていた。

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写真:台湾-アメリカ 決勝戦のスコア

自身はわずか2日間だけの観戦だったが、世界的にU18世代のレベルが向上がはっきり確認できた有意義な大会だった。現地にはMLBのスカウトもいて、大会期間中にニカラグアの選手とマイナー契約を結ぶ場面もあった。まさに国際大会は有望株を発掘する重要なイベントとして位置づけている。

気になった点がある。それは参加選手の表情だ。同時進行で試合が行われていることもあり、行ったり来たりを繰り返す状況も確認していたのはその場の雰囲気だ。初日に会場に着いた直後に見た試合は、日本が負ければ5位というプレッシャーもあったのか、負のオーラを感じていた。一方で他の試合は勝敗は別に国際大会を心から楽しんでいる雰囲気があった。

U18世代は甲子園で活躍した選手も出場することもあり、注目度が高くビジネスチャンスになることも理解している。それも大事なことだが、選手にとって貴重な国際試合の経験や選手との交流についても取り上げて欲しかったと思う。「世界一」になることは目標でいいものの、あまりにも煽りすぎると選手ではなく、大人のための野球になってしまうのではないか。

ユース世代の国際大会は、勝敗よりも選手自身の経験とプレーの視野を拡げる機会になることを願っている。

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写真:夕方の野球場

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