ここまでラオスをはじめ、香港、スリランカ、韓国と2019年の野球旅を振り返ってきた。次は5番目の地、台湾で行われたアジア選手権だ。10月開催となった今大会は日本の社会人代表も参加しており、近年では数少ない彼らの晴れ舞台の1つとなっている。
参加は上の写真にある国と地域。日本、韓国、台湾、中国(通称:アジア4強)は予選免除のために自動的に出場することができる。その他は2018年6月の東アジアカップから出場のフィリピンと香港、そして2019年7月の西アジアカップから出場のスリランカとパキスタンが加わった。また、今年は東京五輪の予選も兼ねる重要な大会であった。
このアジア選手権は林子偉(リン・ズーウェイ/レッドソックス)や張育成(チャン・ユーチェン/インディアンス)といったメジャーリーガーを揃えた台湾が日本を破って優勝した。地元開催としてファンを熱狂の渦に巻き込み、2020年4月に開催予定の東京五輪最終予選への挑戦権も得た。
この大会を一言で表すのなら「新時代の幕開け」だろう。なぜなら、中国が韓国から2勝を挙げて大会3位となり、フィリピンが中国相手に1-0で勝利する歴史的出来事が起こったからだ。これまで「アジア4強」とその下のグループにはかなりの実力差があり、どの大会でも予想を覆すという事例はなかなか見ることができなかった。
その勢力図のカギを握るのはアジア4位の中国。近年はMLBとの提携やアメリカ独立リーグに選手に派遣をするなど選手個人の能力が向上してきている。中国としてはさらに上の3チームに勝つのが次の目標であり、主に高校・大学生中心の韓国代表だったとはいえ、見事に下剋上を成し遂げた。3位を決めたときにはまるで優勝したかのような喜びようだった。それと同時に東京最終予選にも出場することになったからだ。
今回の大会では、アジア4強に動きがあったと同時にその下のグループにもニュースがあった。フィリピンは中国を撃破して12月に自国開催した「SEA GAMES」に弾みをつけていた。香港は大会前に日本合宿を行い、実力上位のクラブチームと対戦し、実践経験を積んだ。その結果、台湾相手に5回17失点でコールド負けをしたものの、6安打2得点と奮闘していた。東アジア組は良かったのだが、自身が気になったのは西アジア組。スリランカとパキスタンの戦力ダウンだ。
7月の西アジアカップでトップ2だった両国だが、台湾での試合は散々であった。スリランカはほぼメンバーは変わっていないものの、7月のときに見た動きにキレが全く感じられなかった。話を聞くところによれば、西アジアカップ終了後に雨が続いた影響でほぼ練習ができなかったという。
パキスタンはちょうど国内で大きなスポーツ大会と日程が重なったことで、スリランカ現地で見た選手達は自然と国内大会に流れてしまったという。そして、選手のビザ問題や大会期間中の投手負傷と不幸が立て続けに起こった影響で選手のやりくりもやっとの状況だった。
こうしてみると国別の実力差は縮まってきているものの、地域別という意味では「東アジア」よりも「西アジア」の発展スピードの遅さが露呈していた。7月の西アジアカップでイラン野球連盟の人が「なぜ、アジアの国際大会は日本や韓国、台湾での開催ばかりなのか」と疑問を抱いていた。
アジア選手権は日本から社会人代表が出ているとはいえ、日本国内での注目度が低い。やはり、出場国の戦力、実力差均衡とすることが大会の魅力を高める1つの方法だろう。代表チームの強化はすぐには不可能だが、アジア野球全体の発展を考えた時、「東」に力が集中しないように「西」もケアする必要がある。今後の課題となっていくだろう。