2019年は7の国と地域に足を運んできた。1月のラオスを皮切りに順番に野球旅を振り返っている。今回は11月に訪れた6番目の場所、中国・広東省にある中山だ。そこで行われていたのは「女子野球アジアカップ」だ。
2017年に香港で第1回が開催され、日本が全勝優勝を果たしている。特徴なのは、日本はトップチームではなく、ユース世代の育成を目指してU18で選手が構成されていること。第2回大会となった今年も同様に日本は高校生が選出され、約2ヵ月間の国内合宿を経て、本番に臨んだ。
その他参加チームは韓国や台湾、香港、インド、パキスタン。そして国際大会デビューとなった中国とフィリピンを加えた計8チームだった。ちなみに日本以外はほぼトップチームが参加。女子野球は2020年9月にワールドカップが予定されており、このアジアカップが予選の役割を担っていた。上位4チームがメキシコ行きの切符を掴む仕組みだ。
大会結果から先に言えば、日本が見事に全勝優勝で大会2連覇を飾った。決勝は台湾と2度目の対決となったが、この日の先発は今季までプロ野球の京都フローラでプレーしていたシェー・ユーイン選手が先発投手として投げていたこともあって接戦となり、2-1で試合終了となった。最終的にワールドカップ行きを決めたのは日本、台湾、フィリピン、中国だった。
日本は決勝戦以外すべてコールド勝ちを収めていた。序盤で大量得点となった影響で盗塁がほぼできず、守備もなかなか打球処理の機会がないなど、選手達は国際大会の雰囲気を感じながらも、存分な力を発揮できず戸惑っていた印象を受けた。
その一方で今大会で快進撃を見せたのは3位に入ったフィリピン。国際大会デビューながらも予選ラウンドで韓国と香港に勝利。台湾には敗れたものの、2勝1敗で予選突破しワールドカップ行きを決めた。選手達は元々、ソフトボール専門であり、この大会のために半年間の練習を積んできたという。塁間の違いに苦労したというが、実際の試合ではそれを一切感じさせないハツラツプレーを魅せていた。
また、7位だったインドは日が経つごとに選手の成長が見られた。特に投手はほぼ1人で投げており、最初はセットポジションができなかったものの、最終日になるとそれができるようになっていた。実際に試合を見ていた人々を驚かせたのは選手達のバットコントロールが優れていることだった。安打になるかは別としてもボールをバットに当てる技術は参加国の中でも上位だったと思う。
日本の選手が1番衝撃を受けていたのは、8位のパキスタン。資金の問題もあってバットがほぼなく、日本から寄贈されたものを使用。また、背番号がマジックペンで書かれていたり、ガムテープを張り付けている場合もあった。普段から野球を見ている側からすればこれらはあり得ないことだが、これがパキスタンの実情なのだ。
全試合終了後に日本の選手からはこのような様子を思い出して「これまで当たり前に野球ができる環境にいたが、世界ではそうではないことを知った」という声もあった。
大会を通して感じたのは、世界的に日本と互角に渡り合えるライバルをつくるが必要性だ。このままでは実力差がありすぎて、大会の開催する価値も注目度も低くなってしまう。特に日本が他国とともにレベルアップを目指していかなければ未来はない、もう「強ければそれでいい」という時代は終わり、共に成長し、切磋琢磨する時代となった。
2020年9月にはワールドカップがある。次の大会はトップチームで臨むことになり、今回のアジアカップに出場した選手はもちろん、高校や大学、プロ野球やクラブ、企業チームと多くの選手に出場チャンスがある。現在、日本は大会6連覇と偉業を成し遂げている。それと同時に日本に勝つ国の出現に期待したい。