【議論】2020年-静岡で考える女子野球の未来②

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写真:指導者についてのテーマ

1月19日に静岡で行われた「女子野球フェスティバル2020」の第2部はガールズベースボールアカデミーと題して、指導者や女子野球に関わる人が集まり、現場での声を聞き、意見交換をする場でもあった。午後の部のはじめは、指導をテーマに講演会が開かれた。

登場したのは昨年まで女子プロ野球「レイア」で監督を務めていた松村豊司さんをはじめ、日大国際関係学部の坪内瞳監督とエイジェック硬式女子野球部の吉田えり監督。男子から女子プロ野球界に移籍してきた松村さん、女子野球に携わって20年になる坪内監督、そして独立リーグ、女子野球の両方でプレー経験のある吉田監督の話に参加者は釘付けになっていた。

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写真:松村さんの体験談

松村さんは、女子選手に対する声のかけ方やトレーニング効果を説明する必要性、故障に対しての対処法など、自らの経験談に基づいて説明した。男子選手なら監督やコーチから言われたことはすぐに「はい」と従うイメージがあるが、女子選手はその逆で納得するまで徹底的に話し合う傾向にあるという。

その分、コミュニケーションを図る時間が多いこともあってやりがいがある反面、難しいことも多々あるようだ。下の写真にもあるように日本の指導者は弱点を補う指導をする傾向にあるが、女子選手に対しては強みを見つけて、良いところを伸ばし続けるのがよい。これはアメリカの指導者が実践している方法だと聞く。

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写真:男性指導者の注意事項

坪内監督からは、女子野球ならではの話があった。女性には人生の一大イベントに「出産」がある。実際に出産が近くなると監督やコーチとしてグラウンドに立つことは難しいのでは、というイメージがある。中にはユニフォームを着て、ノックをしている監督もいたエピソードも披露した。実際のルールブックには規定がなく、違反ではないとのことだ。

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写真:女子野球のはじまり

最後は女子野球の過去・現在・未来について。誕生と消滅を繰り返して既に100年が経過している。1950年代には女子プロ野球が存在し、後楽園球場が満員になった記録もある。現在のプロ野球は紆余曲折を経て、今年で11年目を迎える。プロ野球の存在のおかげで競技人口も増えており、軟式・硬式合わせて2万人以上の女子選手がいることが報告された。

近年は高校で女子硬式野球部を新設するところが増えており、花巻東高校や駒大苫小牧高校など有名校がその中に入っている。ちょうど午後の部が始まる前には東海大静岡翔洋高校が2021年度に女子硬式野球部をつくることを発表していた。当初は5校ほどだった高校野球部の数は今では40校近くに増えた。

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写真:女子野球の未来

競技人口も増えて右肩上がりの女子野球。それでも課題ややることが山積みだ。1月20日には全日本女子野球連盟から2019年度の表彰選手が発表され、女子野球W杯で3大会連続MVPの里綾実選手や埼玉西武ライオンズレディースへの入団が決まった六角彩子選手など長年、球界をけん引している選手が選出された。カテゴリー別の表彰はもちろん、国内外での競技普及活動も表彰される。これこそ、女子野球ならではと言えるだろう。

女子野球も男子同様に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)から発表されたランキングでは堂々の1位だ。自身が感銘を受けるのは、1位という結果だけで喜んでいるのではなく、常に世界と共にレベルアップしようとしている姿勢があることだ。今後はラオスやインドネシアでも普及活動を行うと聞いている。また門戸が広く、1人でも多くの協力を必要としているため、女子野球界には入って行きやすいのではないか。

時間をかけてベイビーステップで進む野球。女子も堂々と野球ができるようになった今、確実に野球の在り方は変わってきている。

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