□約1/160
世界中の野球、ソフトボール連盟を取りまとめている組織、世界野球・ソフトボール連盟(通称:WBSC)には約160の国と地域が加盟している。つまり、普及や発展度に差はあれど、各地に野球・ソフトボール競技が存在することを意味する。
さらに野球だけに絞ってアジア地域の加盟数を見てみるとその数は「24」だ。日本、韓国、台湾、中国とプロリーグがある「アジア4強」を筆頭に他にも同地域には20の国と地域で野球がある。
普段、日本で暮らしていて自然と入ってくる野球情報は大きく分けると、日本とアメリカのメジャーリーグの2種類。ではその他、アジア諸国の野球はどのような状況なのだろうか。今回は中東の一国、イランを取り上げる。
□日本から約7500km先に
イランと聞くとどのようなイメージを思い浮かべるだろうか。ちなみに筆者は中東、サッカー、カーペットの工芸品、イスラム教といくつか思いついた。しかし、すぐに「イラン=野球」と考える人はかなり珍しいのではないだろうか。
野球はアメリカのメジャーリーグが世界最高峰のリーグであり、アメリカのスポーツ。同時にアメリカとイランは政治的に仲が悪い。去る2020年1月には両国間で戦争になる可能性もあったほどだ。つまり、イランで野球は敵国のスポーツという見方もできる。
こうして、イランで野球の社会的立ち位置を考えると、とても良いものとは言えないだろう。それでも野球を選び、日本人と同じく一所懸命にボールを追っているイラン人選手がいるのは確かだ。
調べてみると、東京からイランの首都・テヘランまで飛行機で約18時間だそうで、かなりの長旅となる。その距離は7500kmほどになるという。
□2021年・国際大会開催目指す

野球普及には長い年月が必要。選手を集め、ルールを覚え、プレーできる場所を確保するなど一定のレベルになるまでは時間がかかる。その後、試合ができるようになると、国際大会出場も1つの目標となる。イランは1993年に野球連盟が誕生。世界デビューはその6年後の1999年だった。
アジアを舞台にした国際大会は大きく分けて3つある。日本の社会人チームが参加するアジア選手権、そして同大会への予選とも言える東アジアカップと西アジアカップがある。アジア選手権には先述のアジア4強がシードで出場、東西アジアカップは各大会上位2位の国々がこの4強に挑戦することができる。
東アジアは香港や東南アジアの国々が参加し、西アジアカップやパキスタンやインドなど、西アジアや中東地域の国々が参加する。開催年にとって違うが、アジアカップは2年おきに行われており、ちなみにイランは西アジアカップに参加している。
イランは近年、コンスタントに西アジアカップに参加している。2015年、同大会の代表チームを率いていたのは先日、BCリーグ・茨城アストロプラネッツのGM就任が発表された色川冬馬氏だった。当時は徹底したミーティングを重ね、合宿を通じて1つ1つプレーの動作を確認するなど勝てるチームを形成。大会では歴代最高成績となる準優勝に輝いている。
それから6年後となる2021年。現在のイランは西アジアカップのホスト国の座を狙っている。開催地決定にはアジア野球連盟の承認が必要となるが、参加国での持ち回りが望ましい。近年ではパキスタンとスリランカで開催されており、次はイラン。現地には以下のようなスタジアムも存在しているという。

現在は、新型コロナウィルスの影響もあって満足な練習もできていない。同時にイラン現地では野球に対して政府からの援助はほぼないこともあり、国際大会を開くにも参加するにも、野球連盟関係者が独自に資金を集める必要がある。
国際大会開催のためにイラン野球連盟はWBSCにも資金援助を申し出ている。現状ではコロナの影響もあり、安全面で開催できるかは不透明だが、実現することができたら、イラン野球の歴史にとって新しい一歩となる。もし、開催が決まれば喜んで現地に飛び、連盟や選手の声を聞きにいく。
「Road to 2021」
イラン野球に明るい未来を。