急成長中のBaseball5

急成長中のBaseball5

□5人で1チーム

野球・ソフトボールに続く第3の競技として世界的な普及を目指しているのが5人制野球、通称「Baseball5」だ。5人制野球と聞くと、筆者はテレビアニメ「MAJOR」で主人公の茂野吾郎が高校入学試験の際に行った文字通りの競技を思い浮かべたが、それとはかなり違うものだ。

実際に野球やソフトボールと違うところはプレー人数はもちろんだが、グラブやバットを一切使わないところにある。その代わりにボールは素手で打つことになる。ちなみにボールは柔らかいため、ケガの心配はない。

守備面では投手や捕手、外野手はおらず、一塁、二塁、三塁、遊撃、そして二塁ベース後方にもう1人という陣形だ。プレーは打者が自ら手でボールを打つことから始まる。実際のルールやプレーについては下の動画を見た方が理解が深まる。

はじめてのBaseball5 (出典:Baseball5 JAPAN Youtubeチャンネル)

□70を超える国々に普及中

Baseball5という新競技は2017年に世界野球ソフトボール連盟(通称:WBSC)から誕生した。野球では1試合で9イニング、約3時間かかるところが、この競技では5イニング、もしくは約20分という短時間で試合が終わる。また、野球ではプレーするグラウンドやスタジアムも必要なために建設までかなりの時間を要するが、Baseball5は街の一角や体育館でも手軽に行うことが可能だ。

つまり、手軽にプレーできて短時間かつ、どこでもプレーできるために競技普及という点でうってつけの条件が揃っている。これらの条件のおかげで競技誕生から約3年で世界70ヶ国以上に普及している。国によってはBaseball5の大会が行われたり、同競技の協会が誕生したりとその普及の仕方は多様だ。

他にも野球・ソフトボールと違う点とすれば、男女混合チームでプレーすることができる。2020年2月に開催されたBaseball5欧州選手権に出場した国々は野球・ソフトボール経験者の男女5人が1チームとして参加していた。

男女混合となれば、問題になってくるのは宗教上の考え方だ。例を挙げると先日、野球で紹介したイラン。同国でもBaseball5は行われているのだが、イスラム教では男女が一緒にスポーツをしてはいけないことになっている。ルールの例外をつくらなければ、イスラム教の国々や選手は大会に出場することができない。今、イランはWBSCに対してルールについて相談しているという。

□世界大会ができる競技に進化

先述の欧州選手権は2021年6月にメキシコで開催予定のBaseball5 W杯の予選を兼ねていた。上位2ヶ国がW杯に進出でき、結果としてはリトアニアとフランスがその切符を掴んだ。当初の日程では次はマレーシアでのアジア予選のはずだったが、新型コロナウィルスの影響で2021年1月、もしくは2月頃に延期になった。

アジアからW杯に出場できる枠は3つ。日本でもまだ普及段階のため、誰でも日本代表になれるチャンスがある。選手には野球・ソフトボール経験があることが望ましいが、それよりも守備時に素早い動きができるかだろう。素手で捕球し、送球する。この一連の流れのスピードがあればたとえ経験なしでも選出の可能性は高い。

アジア予選の延期が決まってからはまだ、代替日程の詳細は発表されていないものの、1度募集した選出方法を考えるとデジタルチャレンジになるだろう。Baseball5の一連のプレーを動画に収めて提出する形となる。

日本ではまだ今後の日程が不透明だが、ライバルでなるであろう国や地域もアジア予選の準備を進めている。台湾では先日、初の国内大会を開催、香港では予選のための選手募集中だ。早めの準備で差をつけて勝利しようとやる気十分だ。

2021年のW杯が終わると次に待っている大きな大会は、2026年にセネガルで開催予定のユース五輪だ。ユースとはいえ、五輪競技に選出されたことはBaseball5普及において大きな進歩となる。当初は2022年の予定も、これも延期を余儀なくされたが、逆に考えると期間が延びたことにより、さらなる世界中での普及を推し進めることができる。

W杯とユース五輪。競技誕生からわずか3年で世界大会が開けるほど急成長している。WBSCはいつか本当の五輪競技になることを信じてさらなる普及・発展活動を続けていく。

2019年11月時点の普及地域の様子 (写真:豊川遼)

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