花開いた台湾女子野球

花開いた台湾女子野球

□2001年 女子野球誕生

2019年女子野球アジアカップに出場した台湾代表 (写真:豊川遼)

 2度の延期を経て、2021年3月の開催が決まった女子野球W杯。決戦の地はメキシコ・ティファナだ。同国は女子野球W杯ほか、U23-W杯など近年は積極的に国際大会のホスト国となっている。

 3月にメキシコに向かうのは12の国と地域。大会6連覇中の日本をはじめ、アメリカやカナダ、フランスやキューバなど世界各地から集結する。アジアからは日本ほか、台湾とフィリピンが出場予定だ。

 今回は日本のライバルである台湾の女子野球について。男子野球は台湾プロ野球(通称:CPBL)はもちろん、最近では大学生をはじめとした育成年代も鍛えられており、毎年のようにメジャーリーグ球団とマイナー契約を結ぶ選手がいる。

 その一方で女子野球は、近年では学生選手も増えてきているが、主に社会人選手が中心となって行われている。2001年から始まった女子野球は日本のようにプロ野球はないものの、2020年10月からは初のリーグ戦が始まった。

□台湾女子の発展

 台湾の女子野球選手といえば、誰を思い浮かぶだろうか。筆者は2019年まで愛知ディオーネにいたヂェン・チー選手と京都フローラにいたシェー・ユー・イン選手の2人が浮かんだ。では、2人以外の選手は?と言われればすぐに浮かぶ選手はいない。

 台湾の女子野球は2001年8月に台北パイオニア(台北先鋒女子棒球隊)と高雄カポック(高雄木棉花棒球隊)の2チームができたことをきっかけに、台中やその他の地域にもチームができた。チーム数が拡大していく過程で徐々に大会も開ければ…という段階だったが、女子野球誕生から約3年後に待っていたのが女子野球W杯だった。

 カナダで開催された初めてのW杯には日本ほか、アメリカやカナダ、オーストラリアなど5チームが参加。当時の台湾では女子野球選手の数が圧倒的に少ないことから代表選手は現役のソフトボール選手、または引退した選手からも選出されており、編成に苦労した。初めての大舞台で台湾は最下位という結果に終わった。

 W杯前の2004年2月から台湾内で全国大会の形で女子野球の試合が毎年開催されるようになった。当初の参加チームは3,4チームであり、実践経験が不足してした。これを補うために招待試合の実施や、香港や韓国の女子野球大会に参加するなど、小規模ながらも国際試合の経験を積み、勝てるチームをつくっていった。

 こうした取り組みが花開いたのが、2018年のW杯。台湾代表のこれまでの最高記録はメダルまであと一歩の4位だったが、この年の大会では準優勝。史上初のメダルを手にした。予選でプエルトリコ、決勝ラウンドで日本に敗れたものの、通算8勝2敗で決勝戦に進出する。迎えた決勝戦では、決勝ラウンドで惜しくも1点差で敗れた日本と再戦。前回のスコア、1-2の好ゲームとは一転、日本の里-田中の投手リレーの前に無得点と打線が沈黙して0-6で敗戦となった。

 振り返ると2004年の第1回大会の最下位から始まった台湾は、約14年間で世界の女子野球界でもトップクラスの実力をつけた。時間こそかかったが、着実に実を結んだ。

□2020年 新たなスタート

 冒頭でも書いたが、2020年10月から台湾で女子野球リーグが始まった。これは日本のようなプロリーグではなく、社会人リーグ。7チームが参加し、全28試合をこなす。試合は週末限定で約155人の選手たちが白球を追う。このリーグ戦は2021年3月まで開催される予定だ。

 2001年の女子野球誕生から約20年。これまでリーグ戦が行われていなかったこと自体が驚きだが、リーグ戦開始によって懸念材料となっていた台湾内での試合経験を補うことができる。

 台湾女子野球の中心は社会人だが、最近では高校や大学生の大会や女子軟式大会も開かれるようになった。これは以前、台湾の現地記者から聞いた話だが、台湾はスポーツで世界大会で結果を残せば、その競技が人気になり競技人口が増加するという。

 この記者は筆者に「台湾人には熱しやすく、冷めやすい特徴がある」と解説してくれた。ただし、この話は男子野球の場合だったため、女子野球ではどのように転ぶかは不明だ。2020年は新型コロナウィルスの影響を受けながらも台湾女子野球は新たなスタートを切り、盛り上がりをみせている。ぜひ、この勢いを継続してほしい。

 

 

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