□崖っぷちからの頂点

2020年11月8日、日本野球界では大きな出来事が多く起こった。NPBでは巨人・坂本勇人選手が通算2000安打を達成、千葉ロッテマリーンズが逆転でCS進出を決めた。また、六大学野球では早稲田大学が慶応大学相手に9回で逆転し、リーグ制覇を成し遂げた。
このように日本球界が湧いた同日、海の向こうの台湾でも同様に歓喜の輪が広がった。台湾プロ野球(CPBL)で台湾シリーズ第7戦が行われ、統一ライオンズが中信兄弟を7-4で破って7年ぶり10度目の頂点に立った。
統一は1990年の台湾プロ野球誕生時から続いている老舗球団で、今回も含めて台湾シリーズに14度出場して10度の制覇と無類の強さを発揮している。以前から日本球界とも関わりが深く、近年では埼玉西武ライオンズと交流を行っている。
CPBLは前後期60試合ずつの計120試合で開催されており、2020年前期は中信兄弟が、後期は統一が勝ち台湾シリーズに駒を進めた。統一は初戦に勝利するもそこから3連敗を喫し、崖っぷちとなった。そこから投手陣が踏ん張って逆に3連勝となった。
□迅速だった台湾球界
2020年は新型コロナウィルスが世界中で猛威をふるい、各国のリーグは延期や中止を余儀なくされた。無事にシーズン完走した台湾もその例外ではなく、春季キャンプやオープン戦はおこなわれたものの、公式戦開幕は4月12日(※当初は11日だったが順延)になった。
感染拡大を避けるため、観客にはアルコール消毒やサーモカメラによる検温を実施。メディア対応も監督や選手と距離を置きながらのインタビュー実施など徹底した対策が取られた。こうした取り組みのおかげで、公式戦は例年通りに全120試合を消化できた。
数多くの対策を講じたうえでの開幕は、延期となっていた各国リーグが大きく前進する第一歩となった。NPBや韓国プロ野球のKBOは、台湾を参考に開幕に向けてのマニュアルを作成して、KBOは5月5日、NPBは6月19日に開幕することができた。各国のメディアもCPBL開幕の秘密に迫ろうと取材が殺到していたことも記憶に新しい。
□惜しい日本メディアのCPBL報道
2020年4月、CPBLの開幕に合わせて日本の野球ファンも台湾の試合を見ることができるようになった。普段からCPBLが好きなら、全試合視聴可能な「CPBL TV」に登録している人もいるだろう。その他のファンは中国語や英語を理解しての登録と費用がかかるため、なかなかハードルが高いと思う。
そんなとき、イレブンスポーツが楽天モンキーズと統一の本拠地試合を放送。中信兄弟は「Twitch」、富邦ガーディアンズは「Twitter Live」など日本からでも気軽に台湾の試合を見ることができるようになった。これは野球に飢えていた多くのファンにとって文字通りの「希望」だった。
同時期、日本メディアにある変化が起こっていた。それは毎日のように台湾野球の話題が並んでいたこと。自ら情報を取りにいかない限り、週刊ベースボールでの連載でしか台湾球界の話題を知ることは難しい。
近年はSNSの発達により、ファンがそれぞれ好きな情報をフォローできるようになったものの、メディアはいかに記事や映像で伝えられるかが勝負なのではないか。
筆者は台湾野球情報が記事になっていた約1ヶ月間、とても新鮮な日々を過ごしていた。しかし、その後のNPB開幕により、いつの間にか台湾の情報は少なくなってしまった。需要と供給のバランスで優先順位が下がり、これらの報道が一過性のものだったことはとても残念だ。
もし、このまま台湾球界の話題が日本メディアで継続的に伝えていれば、ファンはより野球を楽しむことができたのではないかと思う。日本、アメリカに続く野球を見る第3の選択肢を提供する機会だった。
誰もやらないのなら自分がやる。当ホームページ設立で書き続ける理由はここにある。