□中華圏の希望

世界中の野球・ソフボール連盟をまとめている世界野球ソフトボール連盟(通称:WBSC)に加盟している国と地域は約「160」。さらにアジア地域をみると、その数は「24」となる。そこからさらに中華圏をみると、中国・台湾・香港の名前がある。
これまで、中国と台湾については触れたため、今回は香港について。アジア勢の実力の順番でいえば、8番目くらいだろうか。WBSCのアジアランキングではパキスタンに次いで6位だが、これはいかに国際大会の開催地になっているかという結果を示している。
香港といえば、人口密度が高く、なおかつ物価が高い、そして高学歴の人がいるイメージ。この中で、野球はまさに富裕層のスポーツになっている。
□国際大会に積極的
筆者はちょうど1年前の2019年11月、中国で開催された女子野球アジアカップを観戦した。その際に香港代表のコーチを務めた方が話していたのが、出場している選手は普段、医者や教師、銀行員をしているという事実だった。
香港では日本のようなプロ野球はない。その代わりに国内大会はもちろん、海外チームを香港に招いて試合をするなど、実践環境を多くの人々に提供しながらレベルが高いをプレーを見ながら成長していく形をとっている。また、大きな国際大会が近づいた際には、代表チームは日本での直前合宿も行っている。
前述したWBSCのランキングを上げるにはいかに国際大会に参加できるかがカギとなる。香港は毎年のように男女野球の両方で国際大会を主催しており、自動的にランクアップに必要なポイントを得る。
女子野球では2月に「フェニックスカップ」、男子野球は12月に「ベースボールインターナショナルオープン」の2大会を主催している。主にアジア周辺国のチームを集めており、女子野球では日本からも毎年参加する。一方、男子野球では日本は参加はしないが、ロシアが参加しているのが特徴的だ。
こうして香港は自ら国際大会へ積極的に参加すると同時に、海外チームとの交流も多く国際経験豊富な選手が多い。現在の課題は世代交代で、新しい選手の育成が急務となっている。
□Baseball5にも参戦
アジア圏で国際大会があれば、出場制限がない限りは必ずいると言っても過言ではないほどの香港。男女野球と同時に、既に5人制野球のBaseball5にも力を入れている。
2020年は新型コロナウィルスの影響で延期となってしまったが、2021年はマレーシアでアジア杯、メキシコでW杯が開催予定だ。日本をはじめとするアジア諸国は、このアジア杯で上位3位に入れば、W杯に出場することができる。既に香港は準備を始めていた。
アジア杯制覇に向けて選手募集を行い、11月8日にはBaseball5の国内大会も開催された。全9チームが参加し、小学生チームをはじめ、香港代表経験者も参加。大会ではあるが、写真を見ると結果よりも競技そのものを楽しんでいる様子だった。
驚いたことに既に2021年2月末までの練習スケジュールが発表されている。香港でBaseball5は、普及と発展を同時進行で行われているため、このような状況を知るとアジア杯では優勝候補となり、日本の脅威になるだろう。
男女野球やBaseball5、競技発展に積極的な香港は常に世界の動きに合わせながら成長を続ける。後は国際大会でメダル獲得など目に見える大きな結果を残せば、さらなる勢いがつく。直近のBaseball5をはじめ、香港の動きは楽しみだ。