女子野球日本代表2021 始動

女子野球日本代表2021 始動

□新監督誕生

 2020年11月11日、全日本女子野球連盟は2021年3月にメキシコで開催予定の女子野球W杯に出場する日本代表の監督・コーチングスタッフを発表した。今回で9回目を迎える同大会では中島梨紗氏がチームを率いることになった。

 同時に中島新監督を支えるのは、木戸克彦氏と福留宏紀氏の両名。木戸氏は前回の2018年大会でも同職に就いており、既に経験がある。また、福留氏は中島監督と女子プロ野球で監督とコーチの間柄で共に活動している。

 中島監督自身も現役時代に投手としてW杯に参加した経験をもつ。今回はトップチームの指揮官として大会7連覇と連勝記録更新に挑む。これまでは埼玉アストライアで監督経験はあるものの、日本代表を率いるのは初めてだ。

□歴代監督の共通点

 今回、中島監督はW杯のみに限れば歴代5人目の監督となる。2004年の第1回大会で埼玉栄高の斎藤賢明氏が率いたことを皮切りに、尚美学園大の新谷博氏、環太平洋大の大倉孝一氏、そして履正社高の橘田恵氏と4名がいる。(※高校・大学名は現在、または当時率いていた女子チーム)

 こうして歴代監督の名前を見ていく中で、何か共通点はないかと思い探してみた。まずは全員、高校や大学チームを率いていること。次にそれぞれのチームを全国大会で優勝、または準優勝に導いていることだ。

 2016年W杯で代表を率いた大倉監督までは日本での実績と国際大会に監督、またはコーチとして関わった経歴を重視しているように思える。2018年の橘田監督、そして今回の中島監督も先述の3名同様に実績と国際大会の経験があるのだが、また一味違った経歴をもつ。

 橘田、中島両監督には選手やコーチとしてオーストラリアでプレーした共通点がある。W杯で一時的に海外チームと対戦しただけではなく、現地に長期間滞在し自己研鑽を行いながら、オーストラリアの野球も知るまさにハイブリットの知識と経験があるのだ。

□世界的発展のために

 女子野球の課題として、国内外問わず競技発展・普及が挙げられる。日本は世界野球ソフトボール連盟(通称:WBSC)が発表しているランキングでも1位をキープしている。筆者は日本が世界に向けて「何を」するかに注目しているため、順位は重要視していない。

 日本は世界的な普及に向けて既に行動している。2020年は代表経験者がフランスに行き、野球教室を行いながら現地の選手と交流する様子があった。フランスは2021年W杯に出場予定であるからまさに「敵に塩を送る」状態ではあるのだが、重要なのはいかに共に成長するかだ。

 9回目を迎えるW杯は出場する国と地域は前回大会同様に「12」。注目する点としては、初めてフランスとオランダの欧州勢も出場するところ。回数を重ねるごとに新興国が出てきており、確実に女子野球の輪が拡がっているといえるだろう。

 普及面は目に見えるほど進んでいる。問題はその先の発展の部分だ。筆者が2019年に中国で観戦したアジアカップ、日本-パキスタンの結果は38-0と恐ろしい結果となってしまった。衝撃を受けたのは試合後で、勝ったはずの日本の一部選手が泣いており、逆に負けたパキスタンの選手が清々しい表情をしていたのだ。この様子を見て、点差以上に苦しい試合であったことを実感した。

2019年アジアカップ 日本-パキスタンのスコアボード (写真:豊川遼)

 この様子を見て筆者は「果たして、このままでよいのか」と筆者は女子野球のより普及・発展が必要だと自覚した忘れられない出来事となった。

 筆者が考える普及の形は国際大会に多くの国々が参加すること。発展の形は大会でコールドゲームがなく、どの試合も拮抗した試合展開であることだ。発展こそ時間がかかるが、かかるほどやりがいがある。見ている側とすれば前述のような試合は避けたい。

 W杯をはじめとする国際大会は勝って終わり、ではない。特に女子野球はいかに海外と一緒に成長、発展できるかにかかっている。中島新監督には勝敗以上にこの競技の未来を考えた動きに期待したい。

 

 

 

 

 

 

 

世界カテゴリの最新記事