□日常生活への浸透
引き続き、ブータン野球について書いていく。前回まではブータン野球の成り立ちや現地人の強み、抱える課題について紹介した。今回はこれからさらにブータン野球がさらに発展するために何が必要なのかなど未来にフォーカスする。
現在のブータンでは、野球を学校教育に取り入れていることもあって、主に14歳から18歳の若者からの関心が高い。このように日常生活の中で野球を経験することでプレーに対する意識が高まり、国内の社会に浸透することを目指している。
2021年からブータン国内で野球リーグが開幕する予定。これも野球というスポーツを身近に感じてもらうための戦略の1つだ。ただし、今は有志団体が主催することになる。もちろん、今後の目標の1つとして正式な協会や連盟設立がある。
□発展望む競技の1つ

ブータンは全20の地区からできている。野球は首都のティンプーで行われているものの、他の地区では皆無に等しい。グラウンドの確保が第1の課題に挙げるならば、第2の課題はブータン国内における全国的な普及だ。
現地ではスポーツ発展の取り組みの1つとして、ブータンオリンピック委員会主催で毎年「オリンピック・デイ」が開催されており、さまざまなスポーツを全国に紹介するイベントがある。その中で野球は「最も発展を望む競技」の1つに選出されることがあり、今後の拡がりが期待されている。
この活動の成果は着実に形として出ており、現在ではブータン各地から毎日のように野球に対する問い合わせがあるという。こうして地道に人を増やしていく中でブータンには約800人の野球関係者が存在する。その比率は男性83%、女性17%。さらに細かくみると、選手は68%、コーチや審判は32%になっている。
全体の約7割は選手で構成される現地の野球人。経験値もさまざまで初心者から7年目のベテランもいる。今はまだ普及の段階であり、国際大会に出場するにはまだ時間がかかりそうだ。
□目指せ国際舞台

2021年に野球リーグ開幕予定のブータンでも、国内普及や球場建設、野球連盟の設立とクリアするべき課題が数多くある。それでもわずか7年間でリーグ戦ができるようになるまでになったのは驚異的なスピードと言える。
これもブータン国王子が現地のオリンピック委員会のメンバーであることやJICAの協力もあって事がスムーズに進めたことが要因に挙げられる。リーグ戦が始まり、より選手たちが実践経験を養うことができたときにはぜひ、手始めとしてインドやバングラデシュといった周辺国と交流試合をしてほしい。既にバングラデシュは乗り気だ。
今回、ブータン野球の現状を知るにあたり、サポートをしてくれたマシュー・デサンティス氏は最後に日本に向けて次のようなメッセージを送った。

「私たちのプログラムに興味をもって頂き、ありがとうございます。ぜひ、いつかブータンを訪れてみてください。今後は、若い選手のプレー機会をつくるために国際交流や連携ができるようにしていきます。発展のために一緒にできることがあればぜひお話しましょう」
継続的な発展を続け、いつかはアジア野球連盟や世界野球ソフトボール連盟といった国際組織への加盟、西アジアカップやアジア選手権といった国際大会に出場する日を待っている。