2021年に注目したい東西アジア野球

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□常に前進

 2021年1月1日を迎えた。この日に至るまでの1年を振り返るとすべて「新型コロナウィルスの影響を受けた」という一言で片付いてしまう。予定されていた国際大会はほぼすべて中止となり、毎年の恒例の野球旅をすることができなかった。

 確かに世界各地から集まった大規模な大会こそなかったものの、その国ごとで独自に大会を開いて野球熱を下火にさせまいと各国の野球連盟が奮闘していた。アジア4強と呼ばれる日本、韓国、台湾、中国以外ではパキスタンやインド、バングラデシュ、カンボジアやタイといった国々が小規模ではあるものの、確実にそれぞれのグラウンドで立って選手たちはプレーした。

 2021年になり、世界最大規模の国際大会は東京五輪が控えている。ただし、出場できるのは6ヶ国のみでアジアからは日本と韓国が決定済で、最後の1枠を争う最終予選に台湾と中国が挑む。

 東京五輪は残念ながら最大で6ヶ国しか出場できない。未だ五輪をはじめとする国際大会ができるか否かは不透明な状況が続くものの、アジア野球は発展の道を探っている。そこで、筆者がアジアを東西に分けて、各地域で筆者が注目する1ヶ国ずつ紹介したい。

□東南アジアの「新星」

写真:ハノイベースボールリーグ

 前述のアジア4強が入っている東アジア地区。4強以外の国々を見ていると国によって気候やレベルの違いこそあるものの、野球をする下地はできている。アジア大会や東南アジアの五輪と呼ばれる「SEA GAMES」をはじめとする国際大会や国ごとにみても野球専用の球場は時間をかけて建設し続けている。

 2021年の東アジアは東南アジアに注目したい。特に来たる1月9日から野球選手権が始まるベトナムだ。この国では現地在住の日本人が集まって普及活動を行っている「日越野球協会」と韓国プロ野球で初代三冠王になったイ・マンス氏の財団「ハルクファウンデーション」の2大勢力が発展に力を入れている。

 「日越野球協会」はサイゴンベースボールリーグを開始させ、道具の寄付や練習試合の実施などでベトナムの野球人口を増やそうとしている。その一方で「ハルクファウンデーション」は2020年12月にベトナム野球連盟設立に尽力し、直接、政府と連携をしながら教育現場で野球を取り入れたり、国際連盟に加盟させようとしている。

 現状でベトナムはまだアジア野球連盟や野球・ソフトボール連盟といった国際連盟に加入していないため、2連盟主催の国際大会には出場できない。ただし「SEA GAMES」では東南アジア所属という理由からチームができれば参加することができる。しかし、2021年大会のホスト国となっていたベトナムでは野球競技が開催されないことが決まっている。次なる機会は2023年のカンボジア大会だ。

 2021年は日韓の力を借りて、ベトナム野球がどこまで成長を遂げるのか楽しみ。現地の人気スポーツといえばサッカーで、野球がこれに続けるかという追いつけ追い越せができるかどうか見ものだ。

□西アジアで大規模リーグ開催!?

写真:2017年ドバイカップで優勝したパキスタン

 次に西アジア地域。ここではパキスタンが先頭に立って野球普及・発展に力を注いでいる。東地域と大きな違う点として自国のみの発展だけではなく、周辺国を巻き込んで共に発展しようとしている点が挙げられる。

 つまり、西アジアの注目国にパキスタンを挙げたい。ここは発展よりも周辺国を巻き込む力に注目している。既に同国はネパールやアフガニスタンのアジア野球連盟加盟に尽力した実績したをもつが、2021年になって長年、温めてきた計画を実行に移そうとしている。それが「パキスタン野球リーグ」だ。

 パキスタン野球リーグはその名の通り、パキスタン人だけで行うリーグ….ではない。それはあくまでも名前だけで、実際は周辺国を巻き込んだ大規模なリーグ戦のことだ。

 まだ正式決定はされてはいないが、パキスタン野球連盟のサイード・ファカー・アリシャー会長は参加予定国を発表しており、その中にはパキスタンとUAE、カタール、マレーシアだ。筆者のTwitterでも以下のようにつぶやいている。

 

 その後、アリシャー会長は2021年1月にイランを訪問して、同年開催予定の西アジアカップのホスト国になる予定のイランのサポートをするために話し合いに行くことを発表している。同時にこのパキスタン野球リーグへの参加を呼び掛けるとのことだ。

 今回の大規模なリーグ戦開催については筆者は以前、アリシャー会長から構想を聞いたことがあった。それは遡ること2年前の2018年、台湾で開催されたU12アジア選手権でのことだ。試合後、パキスタンとインドの首脳や選手らが合同で独立記念日を祝うパーティーが行われていた。そのとき、ホテル内の休憩室でアリシャー会長は筆者に次のように話していた。

 「今後の西アジアの発展のためにはもうパキスタンだけでは不可能だ。周辺国とともに一緒に発展しなければならない。そのために私は野球リーグをつくろうと考えている。既にUAEとは話をしている。後はインドをはじめとする周りの国々が付いてきてくれたらそれは実現できる」

 その後、何度かアリシャー会長と再会しているが、上記について話題になることはなかった。筆者は既に頓挫したものだと思っていたが、実は裏で事が進行していたのだ。たとえ、時間がかかっても物事を実現させようとする力はアジア野球全体の発展のためには必要不可欠だ。

 続報はイランでの首脳会談を結果を待つことになる。久しぶりにワクワクする話題が2020年末に出てきた。先行きが不透明な中でも、目ではっきりわかる動きは嬉しいことだ。

 「塵も積もれば山となる

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