□待ち遠しい始動日
早いもので2021年も2ヶ月目に突入した。NPBでは無観客ながら春季キャンプが始まり、連日のように情報が流れてくる。しかし、緊急事態宣言が延長されたことで、予定通りに開幕できるのか、コロナ禍前の試合数でプレーできるのかなど心配事は多い。それでも、例年通りに球春を迎えられたのは素直に嬉しい。
日本はある野球はNPBだけではない。2021年は独立リーグが盛り上がりを見せている。リーグとしては九州に’アジア’プロ野球機構が誕生し、筆者の好奇心をくすぐるような名前となった。
また、BCリーグでは埼玉武蔵ヒートベアーズにヤクルトや楽天でプレーした由規投手が、栃木ゴールデンブレーブスには村中恭兵投手といったNPBで実績を残した選手らが次々と参戦している。
こうして多くのファンにとってNPBのほかに独立リーグも見る選択肢が増えたように感じる2021年はとにかく始動日、開幕日が待ち遠しい。筆者が注目をしているのは、茨城アストロプラネッツ(以後:茨城AP)だ。
□注目度が高い球団
もちろん、BCリーグの他球団もメディアに登場はしているものの、2020年10月以降では茨城APが登場する回数は1番多いのではないだろうか。新監督にジョニー・セリス氏、GMに色川冬馬氏を迎えてからは積極的に外国人選手や実績ある選手を獲得しており、野球ファンが「茨城アストロプラネッツ」の名前を覚える機会が増えている。
新首脳陣発表後は、プレミア12でメキシコ代表だったセサル・バルガス投手をはじめ、オリオールズでプレーしたダリエル・アルバレス外野手、そして、西武ライオンズでプレーしたアレックス・カブレラ氏の息子、ラモン・カブレラ捕手といった日本球界と関係があったり、MLB経験者という触れ込みで注目を集めた。
そして、2月8日には昨年は横浜DeNAベイスターズでプレーした濱矢廣大投手の獲得を発表した。同時にアレックス・ラミレス氏の支援も受けながら復活を目指すことも明らかになった。濱矢投手は昨年末の番組で家族とともにNPB復帰に向けて取り組む様子が特集されたこともあり、今後が気になっていた選手だ。
こうした選手らを獲得することによってチームの認知度アップや成績の向上、応援するファンが増えるだろう。筆者がこれらよりも期待している事柄がある。それは2021年、茨城APでプレーする選手がそれぞれ希望する道に進めるかどうかだ。
例えば、今回の濱矢投手であればNPB復帰のように1年後にチームから離れた後、入団時に希望していた場所に進み、輝くことができるかどうかの「その後」だ。野球界では毎年のように退団後や引退後の進路に不安を持っている選手の話がでてくる。もう野球だけでは人生設計ができない時代になった。
茨城APではSNSやYoutubeといった媒体を使って球団の取り組みを紹介している。筆者が新鮮だと感じたのは首脳陣と選手が面談をする様子だ。プロ野球の世界ではなかなか見ることができない珍しい光景に興味をもった。いわゆる、学校で誰しも経験してきたであろう進路面談の野球界バージョンだ。
選手自身がどこのレベルを目指しているのか、退団後にはどの場所で輝きたいのかといった希望を聞き、首脳陣が成長プランの提案やアドバイスを送る。これらを受けて選手がどのように動くのかはぜひとも見たいところ。
日本の野球界はよっぽど悪いことをしない限りは、最低1年間は面倒を見てくれる。しかし、茨城APには海外経験をもつ首脳陣や選手がいることもあってこの部分はシビアになると予想している。つまり、成績が悪ければ即刻でクビになるだろう。しかし、MLBでは当たり前の世界だと言える。
とはいえ、日本では慣れない状況。見ている側とすれば、当たり前とは思っていてもそれが現実となると恐れ多いものだ。この雰囲気が競争意識を生み出し、さらなる高みへと選手を導くことになる。まだ、シーズンは約2ヶ月ほど先にはなるが、こうした取り組みがどちらに転ぶのか楽しみで仕方がない。
□独立リーグ革命軍 出陣
シーズン開幕に向けて着々と準備を進めている茨城AP。まずは地元・茨城県のファンを増やすと同時にいかに他の都道府県のファンをワクワクさせる、自分事にさせるか。
最近ではメディア登場が多くなっていることもあり、これまで球団の存在自体を知らなかった人に対して認知される機会もつくり、球場に足を運ぶ理由をつくることもできているのではないか。他県出身者だと、学校や仕事などでその場に行かない限りはどこまで行っても他人事になる。
いかに茨城県を、球団をまるで「おらがチーム」のように感じてもらうかで応援する人や注目する人が増える。普段から野球を見ている人に対して上記にある新戦力の選手の存在が大きい。筆者ではそれだけでもワクワクしている。また、茨城APはSNSでは「独立リーグ革命軍」を推しており、文字通りに現状の独立リーグを変えようとしている。
入団契約を交わす際に濱矢投手自身も「新しい挑戦をしているチーム」と話しているように選手もワクワクを感じることができる環境づくりをしているように思える。強力なバックアップがある中で、自分自身の成長のために動こうと決めたとき、自身が思い描く道へと進めるのではないだろうか。
選手1人1人の人生を良い方向に導くと同時にファンもワクワクさせる魅力的なチーム。それが茨城アストロプラネッツの「独立リーグ革命軍」だ。