□死にもの狂いのアジア野球
アジア地域の国際大会を取り仕切るアジア野球連盟(通称:BFA)にとって2021年はとても忙しい年になる。なぜなら、新型コロナウィルスの影響で開催予定だった大会がすべて中止・延期となり、予定が今年にずれ込んでいるからだ。
予定されているだけでも、U12やU15、U18のユース世代のアジア選手権をはじめ、日本からは社会人代表が出場するアジア選手権、この予選となる東西のアジアカップ、そして初開催となる大学アジア選手権、最後に女子野球アジアカップとかなりの数の大会がある。
現状ではU12は中止との報道がでているが、この大会を除いても、開催予定のものが多すぎてまさに死にもの狂いの状態だ。まだまだコロナの収束の兆しが見えないこともあって、国際大会がでできるかどうかも不透明だ。各国の首脳陣や選手も大会があると思いながらできることをやっていくしかない。
□西アジアカップはほぼ決定
確かに大会ができるかどうか分からない。それでも開催することを前提で動くしかない。それでも早い段階から動いていたのがアジア西地域のパキスタンとイランだった。去る1月、パキスタン野球連盟の首脳陣はイランを訪問し、共に野球を発展させるプログラムの構築について話し合いを行っていた。

イラン野球にとって2021年はとても重要な年だ。なぜなら、前述したアジア選手権の予選にあたる西アジアカップのホスト国になり、国内初の国際大会を開催することを目標にしているからだ。
西アジアカップはパキスタンやイランほか、インドやネパール、スリランカといったアジア西地域の国々が参加する国際大会のことだ。今大会の上位2ヶ国が日本が待つアジア選手権への出場権を得る。
2019年の前回大会はスリランカで行った。当時のホスト国候補は他にもパキスタンとイランがおり、日本の後押しによってスリランカに決定した。これを受けてイランは次回大会でのホスト国を目指してきた。実際に筆者がスリランカを訪れた際は「次はイランで(大会を)やろう」と盛り上がりを見せていた。
そして、2月11日に世界野球ソフトボール連盟(通称:WBSC)から西アジアカップについての記事が出た。BFAからの承認を得た後、7月にイランで開催する。
スリランカで取材をしたイランの野球選手からインスタグラムを通じて現状報告が来る。そこで「次のアジアカップはイランでやるから必ず来てね」と言い、まるで既に開催決定したかのように興奮ぎみで伝えてくるため、嬉しい反面、困惑することもある。
近年、イランはコンスタントに西アジアカップに出場している。以前は現・茨城アストロプラネッツGMの色川冬馬氏が代表チームを率いて準優勝したことがある。彼がイランを去って約6年が経った今でも現地では野球の火は燃え続けている。
前回大会は4位で入賞はできなかったが、自国開催となると選手たちはかなり張り切ってプレーするだろう。筆者もその様子が見たい。
□大会後も発展
イランは西アジアカップを自国開催することが1つの目標。しかし、これだけではいわゆる「燃え尽き症候群」になりかねない。パキスタン野球連盟と話し合ったことは、国際大会のことだけではなかった。
パキスタンからの提案ではあるが、西アジア地域では新たな野球リーグをつくる構想がある。現状では国ごとで練習やリーグ戦が開催されているものの、なかなか地域まるごとの同時発展には繋がっていない。
この状況を打破するため、パキスタンはイランをはじめ、インドやカタールなどの周辺地域を巻き込んでリーグ戦を開催しようとしている。パキスタンは過去にはネパールやアフガニスタンといった国々のBFA加盟を支援した実績を持ち、今でも周辺国との連携と発展を目指している。
このリーグ構想は2018年から計画されており、筆者は台湾でその話を聞いた。パキスタン野球連盟からは「もう自国だけで野球をする時代は終わった。これからは周辺国と連携し、共に野球発展をしていく時代だ」と力強く宣言していたのは今でも鮮明に覚えている。
イランもこの話に乗り気だ。このリーグ戦参戦と同時にパキスタンとはユース世代の選手育成のために交流戦や練習といった計画もあるという。来たる西アジアカップを機にイラン国内での野球熱がさらに高まっていく様子が伝わっていく。
まずは無事に西アジアカップが開催されることを願う。筆者のイラン訪問はほぼ決定事項のため、入国できればよいのだが、1日でも早いコロナ収束を望む毎日が続くことだろう。