□急増した女子野球報道
とても久しぶりにこのホームページの更新となる。気づけばもうすぐ東京五輪が開幕。心配や不安の声が多く聞かれる中でもNPBや独立リーグなどの野球はコロナ対策をしながらも試合をこなしている。時間が経つと物事が一気に加速し、いつの間にか新しい流れもできる。
この3ヶ月ほど、気になっているのは女子野球関係の報道を目にする機会が増えたことだ。これまでの女子野球の報道といえば呼ばれた加藤優選手(現・GOOD JOB)と高塚南海選手(現・阪神タイガースWomen)の2人の話題が中心で主にインスタグラムの更新を知らせるものばかりだった。
これらは筆者からすれば報道ではなく、PV稼ぎのための「ネタ」であり、女子野球の内容ではなかった。しかし、最近ではこの流れが変化している。そのきっかけは夏の女子高校野球全国大会決勝が甲子園で行われることが決まったからだと思う。
近年の男子の高校野球甲子園大会は投球多々やら休息日が少ないといった問題がある中でも「女子野球も甲子園で」という声もあり、長年の想いが実現した形だ。実際にプレーしている選手や関係者、もちろんこの筆者も新しい扉が開かれたという意味ではとても喜ばしいことだ。しかし、現状は男子の甲子園大会の休息日を埋める「オマケ」だ。これを打破するさらなる取り組みが必要となるだろう。
□女子野球と野球女子
さらなる取り組みとはいえ、既に女子野球連盟をはじめ、全国的にも動いてはいる。広島・広陵高校や福島・学法石川をはじめとする高校でも女子野球部の設立を発表したり、広島で女子野球アンバサダーの誕生、女子野球タウンの認定とこの数ヶ月間の女子野球関係の動きは激しかった。
また、競技としての女子野球と同時に、野球をすることで自分を魅せる活動をする野球女子の存在も大きくなってきた。最近では120キロ左腕の笹川萌さんや240キロをキャッチするめいちゅんらが注目されている。彼女らの技術はもちろんのこと、野球を武器として表舞台に立つことで「女性が野球をする」という社会的立場も向上していることだろう。
要するに「女性が野球をする」とすると言っても、女子野球選手と野球女子と二分化が顕著になっているように感じる。女子野球選手は競技、スポーツとしてプレーしているのに対し、野球女子は野球を得意とする芸能人といった方がよいだろう。ぜひとも、女子野球選手 vs 野球女子の対決を見てみたいものだ。
□まだまだ偏重報道
最近、女子野球の話題についてこのような本が発売された。
このベースボールタイムズ(通称:BT)はNPBはもちろん、独立リーグや海外野球、女子野球と扱うジャンルは幅広い。筆者も1度、プレミア12関係でお世話になったことがある。最新号では野球界で働く女性を特集しており、選手やコーチ、球団職員など様々な形で活躍している方々にスポットを当てている。
前述のように全国大会決勝を甲子園で開催すると決まってから報道が増えた。この事実は喜ばしいことなのだが、出てくる話題はまだ決まったものばかりだ。例を挙げると埼玉西武ライオンズレディースや阪神タイガースWomenといったクラブチーム、または神戸弘陵の島野愛友利投手のことが多い。
誰も知らないような選手を報道するよりかは読者に見てもらえる可能性は高い。それは自然の流れではあるが、西武と阪神の場合はどちらかといえばチーム全体の話題、神戸弘陵にいたっては島野投手1人だけであり、どうも読んでいる側とすれば全体像が見えてこない。
ここでの全体像の意味は「他に選手はいないのか?」ということである。神戸弘陵でいえば、島野投手は2021年夏で引退となるが、彼女がいなくなったら果たして、メディアは今のように注目するだろうか。確かに女子野球界で同校は強豪なのだが、なんとももどかしい気持ちになるのだ。これはMLBの大谷翔平選手の報道にも見られる光景だ。
女子野球報道が増えたとはいえ、まだメディアはチームやW杯で活躍したなどといった知名度や実績でしか見ていない。つまり、この女子野球ブームは一時的のように感じて、筆者は複雑な胸中だ。女子野球高校甲子園決勝が終わった後、メディアがどう動くのか個人的には見ものだ。
一時的なブームで終わるのか、それとも永続的に続くのか。2021年は延期されているW杯の開催も予定されている中、女子野球の明暗が分かれる大事な年になるだろう。