流れを止めるな!女子野球

NO IMAGE

□発展させたいという声

 突如、弘前学院聖愛のグラウンドを訪問してから早数日、このコロナ禍を機に地元・青森県に戻ってきた筆者にとって最近は地方における女子野球文化の形成に考える時間が増えた。2021年3月までは東京にいたこともあって、関東・ヴィーナスリーグをはじめ、女子野球の試合を観る機会が多かった。

 最近の女子野球ブームによって地方の高校で女子硬式野球部を創設しようとするところが増えているとはいえ、こうして青森に帰ってきてから思うのは試合を「観る」機会が圧倒的に減ったことを実感している。それもそのはずで1チームしかなく、女子選手同士の試合は現時点では不可能だからだ。

 逆に地方に女子硬式野球部ができることによって関東、特に東京のチームが存続の危機という話も流れてきているくらいだが、青森ではまだ、弘前学院聖愛しかないのだ。2022年4月から始動ということで、それまでにチームとして活動するには最低でも9人は集める必要がある。そのために学校の「中の人」は学校の認知度アップのために動き出したようだ。

 2021年になってから女子野球に対して「女子野球を発展させたい」という声をよく聞くようになった。競技への関わり方は「する」「みる」「ささえる」の3つに分かれる。筆者の周囲には「ささえる」側が多い。前述のように高校のチーム数が増えてきているとはいえ、その根っこの部分はできているのか、という点で疑問に思うことが多い。

□変化はしているものの…

 筆者は決して女子野球のことを嫌っていない。むしろ、好きであり「ささえる」側だと思っている。これまで、日本のみならず、香港で開催されている「フェニックスカップ」や中国で行われた「アジアカップ」も見に行って世界の女子野球の状況も見ている。

 今夏の甲子園ブームによって女子野球部を創設するチームが増えたこと、以前よりもこの競技に注目してもらう機会が増えたことはとても嬉しく思っている。しかし、筆者にはまだ、周囲がただブームに乗っかっているとしか思えない感が強い。物事を始めるためには流れに乗ることも大切なことだが、チームづくりにあたってその準備が着実に進められているのか、という話だ。

 先日、弘前学院聖愛を訪問して聞いた時点では「女子硬式野球部を立ちあげる」と発表した後はこの1ヶ月間、具体的な活動はしていなかったそうだ。そこで先導役として、過去にニカラグア女子野球創設に尽力した阿部翔太コーチングマネージャーが招聘された経緯がある。

 この弘前学院聖愛の動きにも注目しつつ、日本各地域のリーグや試合の状況を見ているとチーム数を増やした後は女子野球を通じてどのような世界にしていきたいのかが、イマイチ見えてこない。競技として楽しむことや女の子が野球をすることが普通となる環境になることは、競技としての根っこや基礎の部分だと思う。

 以前、筆者が静岡で開催された女子野球セミナーに参加したとき、次のような課題、これからの活動について発表されていた。

 この2年間はコロナ禍という問題に直面してはいるものの、このリストの中では特に人材育成と国際交流いう分野で停滞している。今は各地で試合を開催することに精一杯という印象を受ける。それが競技継続の1番の方法であることは理解しているが、今後も同じように続けていくのか、というところだ。

 メディアについては最近では次のようなところが登場している。

 もちろん、他にもメディアはあるものの、専門的という意味ではここが認知度を高めている。よく女子野球の大会レポートをしたり、最近では選手にアンケートを取っていたりと、徐々に競技を身近にしてくれていると思う。これは「みる」側のファンにとってはありがたいことだ。

 こうして「みる」側の情報は不足していないだろう。筆者が問題に思うのは、環境をつくる側の「ささえる」側に必要な情報が閉鎖的になっているということだ。今はコロナ禍で行動制限があるにせよ、イベントや講習会なるものはその地域にあるチーム限定、もしくは身内のみの話となっている。

 前述の弘前学院聖愛の場合、現状では認知度アップのために動いているものの、女子野球の指導や文化形成に必要な情報を得るための選択肢は少ない。2023年以降、学校の部活動は地域主導になっていくことも考えると、指導者やこの競技に関わる人はより学び続ける必要があるのだ。

 女子野球の未来、注目されはじめたからこそ、環境整備の基礎づくりは重要だ。今後の全体の動きにより注目していきたい。

 

女子野球カテゴリの最新記事