□驚きの参加人数

11月28日、青森県にある弘前学院聖愛高校は県内の小中学生を集めた「女子野球交流会」を開催した。同校が来春の女子硬式野球部創部を発表したのが10月1日であるから、それから約2ヶ月にして初の大規模イベントを行った。これまでは体験入学の形で練習会を行っているが、次はよりインパクトがあり、門戸を広くするという意味で参加者の対象を小中学生とした。
筆者もスタッフの1人として聖愛側の準備状況を聞いており、開始1週間前にして初めて聞いた参加人数が30人。そこから50人を超え、前日には58人とこの数日でかなり増えた。そして、当日にイベント会場に行ってみるとさらに増えて総計60人となった。もうこれは「スゴイ!」という一言に尽きる。
青森県の女子チームはNPBガールズトーナメントにも出場している「青森ゴールデンボンバーズ」しかない。後は男子に混じって一緒にプレーしている女の子がいる。中にはチームの主将やエースを務めている子もいるとのことで、驚くことばかりだ。今回は立場関係なく、野球という共通言語で野球少女たちが弘前学院聖愛に集まった。
□笑顔溢れる場所
青森県各地から集まった60人の野球少女たち。果たして、彼女らをまとめることはできるのか!?イベント開催において、支える側の尽力も必要不可欠だ。弘前学院聖愛からは太田淳(おおたあつし)男子硬式野球部長をはじめ、野球への情熱が尽きない外部コーチの方々、そして今夏の甲子園で活躍した男子硬式野球部の3年生が集結し、サポートする側も精鋭揃いであった。

上記の写真がタイムスケジュール。最初はリズムアップとダイナミックスを通じてアップを行う。音楽や掛け声に合わせて大きく両手を回したり、両足を素早く動かしたりと、とても忙しそうな動きの連続で女の子たちは最初は戸惑いながらも徐々にコツを掴むと会場には笑顔が溢れていた。見ている側も自然と笑顔になり、とても楽しいのだ。

弘前学院聖愛ではこのトレーニングをアップに取り入れたことで、故障者を出すことがなかった。選手個々でも足の動きが早くなり、投手は球速アップにも繋がったという。このアップの時点で女の子だけではなく、サポートしている3年生も自然と笑顔になっていたことが印象的だった。
アップが終わるといよいよ、技術練習の時間。弘前学院聖愛の特徴的な施設として2ヶ所のビニールハウスがある。そこでブルペン投球と守備練習、打撃練習と分かれ、グラウンドではキャッチボールが行われた。中学生には体験の意味を込めて硬式球を使用、小学生は軟式を使って野球のプレーを楽しんだ。

今回はイベント方式であり、プレーする機会を創出することを目的としている。楽しいことが大前提だ。今日、野球の現場で問題となっている怒号や罵声も一切、聞こえない。実際にボールを後ろに逸らしたり、空振りしたりと失敗してしまった子もいる。こうした出来事に対しても励ましたり、失敗しても再挑戦できるような気づかいもしていた。これが本来のグラウンドで広がる光景なのではないだろうか。

ノックのときには順番を待っている子が、前の子が捕球できるように落下点を教えていた場面もあった。この日、初対面ながらお互いにフォローし合う姿は筆者はあまり見たことがなく、とても新鮮であった。参加している全員が笑顔で楽しくプレーできるように自然とサポートできる光景をみて、また新しい女子野球の魅力を発見した。

技術練習が終わると、コンディショニングをして体を動かすのは終わり。最後はビニールハウスに集まって弘前学院聖愛女子硬式野球部の設立の経緯や今後の動き、アイスブレイクタイムと楽しい雰囲気で交流会は終わりを迎えた。

□交流会と今後
約3時間、青森県内の野球少女が集結して行われた今回の交流会は大成功を収めたと言ってもいいだろう。我々、サポートする側全員が驚いたのは60人という参加人数にある。青森県内にこんなに野球が好きな女の子が集まっているのだ。これは何度でも伝えたいことだ。
弘前学院聖愛は青森県で1番最初に女子硬式野球部をつくると手を挙げたのだ。もちろん、この場所でプレーするか否かは本人の選択自身だ。ご縁があればぜひ地元でプレーしてほしい気持ちはあるが、強制ではない。同校はソフトボール部も強いため、野球とソフト、どちらでもプレーできる選択肢がある。
今回の女子野球交流会を通じて、参加した女の子たちには弘前学院聖愛に女子硬式野球部ができることだけではなく、それ以前に県内にはこれだけ野球が好きな仲間がいて、一緒にプレーができるんだという発見と楽しさを感じる場となれば嬉しい。今イベントは「第1回」と銘打っていたこともあり、自然とこの後も続くことになる。
まだ弘前学院聖愛女子硬式野球部は立ち上げ段階で、今は常に動いているところを見せる必要がある。活動している過程を見せて1人でも多くの人に「聖愛」という名前を知ってもらい、応援してくれる人を増やしたい。そして全員で青森県、東北全体の女子野球発展に繋げていきたい。
今後は来春に集まった人数次第により、単独チームやクラブチーム、青森連合チームのどれかとして活動し、それぞれの大会に出場するプランがある。現時点ではどうなるかは未定だが、早い段階で大会に参加できるように環境を整えていく。ぜひ、今後も弘前学院聖愛女子野球部の草の根活動に注目してほしい。
弘前学院聖愛女子硬式野球部のTwitterはこちら。