□渡航先決定
今秋、海外女子野球の現状を日本の女子野球界に伝えようと動き出した「ミライ会議」は埼玉西武ライオンズ・レディースに所属する志村亜貴子選手と里綾実投手をプロジェクトメンバーに迎えて動き出した。我が阿部翔太代表も日々、汗水を垂らしながら協力者集めに奮闘している。
今回は「海外女子野球」をキーワードとし、実際に現地に行ってその国の女子野球の現状をレポートしようというのが目的の1つだ。前回はまだその渡航先が決まっていなかったが、当活動の運命を握ると言っても過言ではない国が決まった。
そこは…中米・ニカラグアだ。
□実情を知る
なぜ、ニカラグアを選んだのか。それは阿部代表自身が過去、ニカラグア女子野球リーグ創設に尽力し、彼の教え子たちが整っていない環境の中で女子野球を希望として日々、挑戦しているからだ。同時に国としての特徴として野球が国技になっていること、そして女子野球も野球連盟や国からの支援で成り立っており、継続的にリーグ戦が行われいることが挙げられる。これらの情報のみだと、日本以上に環境が整っているように感じるが決してそうではない。
現在のニカラグアは情勢不安定だ。政府から言論統制がされており、メディア報道もままならないという。女子野球においても、今となってはワールドカップ予選に出場したり、リーグ戦が行われたりと順風満帆に見えるが、女性がスポーツをすることに懐疑的な目を向ける人々も少なくない。なぜなら、お金にならないことをするよりも、働いて家庭を助けた方がよいからだ。
このような状態ながらも野球を始めたことで新しい夢ができたり、人生が変わったという選手がニカラグアにはいる。今回の渡航はただ、野球をしているところをレポートするだけはなく、彼女たちがどのような国や家庭環境の中でプレーしているのかを知り、目で見てきたものを日本に伝えるためだ。
□お金よりも女子野球のため
8月23日、阿部代表は里投手とオンライン会議を行った。このプロジェクトを成功させるには、この取り組みの存在を1人でも多くの人に伝えること、そして協力者のチカラが必要となる。実際にニカラグアではドキュメンタリー番組の製作を目的としている。こうした文字でのレポートに加えて、人々の動きをリアルに伝えることができるのは映像が1番の方法ではないか。そこで、阿部代表は既に日本だけではなく、ニカラグア現地での協力者も募っている。
しかし、1番の悩みどころはお金のやりくりだ。実際にこのプロジェクトを支援してくれる人々に対しては目に見えて、この取り組みへの参加を実感できるようなグッズを用意しようとしている。これらのグッズのデザインや番組製作を依頼するにあたり、お金を支払う必要がある。どのようにお金を振り分ければいいのか、オンライン会議で阿部代表は普段の軽快な口調で進行具合を説明したものの、心は中は不安でいっぱいだった。
そんな中、里投手から希望の光を照らす言葉が飛び出す。元々、当プロジェクトに志村選手と里投手が参加しているのは「ミライ会議」と「野球はみんなのスポーツ」という団体が一緒になって女子野球の発展を目指すイベントだからだ。
「女子野球の発展のために行動がすることが1番だと思います」
「女子野球のためになんでもやります」
これまで里投手は女子プロ野球やワールドカップで活躍し「世界の里」として尊敬されている。表向きでは栄光を手にしているように思えるが、その裏では女子野球発展に向けてどのように行動していけばよいか分からないという悩みを抱えていた。最近では気持ちが吹っ切れたのか、全国の女子野球チームや野球部を巡業して野球教室や選手と交流する機会を増やしている。また、自ら女子野球に興味がある人々を募って話し合う場を設けるなど爆発的な行動力を発揮している。
こうして女子野球発展を想う気持ちが重なり、阿部代表の頭を悩ませていたお金への不安もなくなった。里投手の言葉が阿部代表の目を再び輝かせた。参加者がお互いにフォローし合いながらよいものをつくっていく。このプロジェクトは始まったばかり。次はどのような動きになるのか、続報はこちらで!