2022年ニカラグア野球旅を振り返る①

2022年ニカラグア野球旅を振り返る①

人生初のスペイン語圏

2023年になってから早5日、WBCや西アジアカップといった野球の国際大会が戻ってくる重要な年となる。

国際大会の復活は、コロナ渦によって海外移動がしずらい状況が少しずつ改善している証だ。その中で筆者は昨年10月から11月にかけて中米・ニカラグアを訪れていた。

その目的は女子野球だった。筆者の友人であり、元々は青年海外協力隊の野球隊員としてニカラグアに滞在した経験がある阿部翔太氏のプロジェクトに同行していた。

メインはニカラグア女子野球のドキュメンタリー制作にある。現地での野球活動の様子を映像として残しながらも、日本の女子野球関係者に、野球で世界とのつながりや新しい選択肢を提供することにあった。

今回は10月28日から11月14日まで約3週間の滞在だった。その間はドキュメンタリー番組の制作現場や女子野球が行われている様子を見ていた。

筆者はこれまで野球でアジアを巡ってきたが、人生初の中米でありスペイン語圏での生活。ここでは実際に目の当たりにしたニカラグア女子野球について書いていく。

日本にはないアカデミーの誕生

ニカラグアで女子野球が始まったきっかけは、阿部翔太氏の活動だった。元々、野球隊員として男子野球の指導を任されていたものの、ある時にグラウンドに来ていた13歳の女の子が「私も野球をやりたい!」と言ったことがはじまり。

そこから学校での体育の授業をはじめ、ニカラグア各地に赴いて男女同時に野球を教えていたという。

これが2016年から2017年の話だというから、阿部氏は約4,5年ぶりに教え子に再会したことになる。その間は本人も女子野球の成長にかなり驚いていた。

ニカラグア滞在中は主に首都のマナグアにいた。この場所にはニカラグア野球連盟とスポーツ庁が共同で設立、運営している野球アカデミーがある。

もちろん、男子の指導もしているが、女子野球専門の指導は週3回で1日約3時間で行われている。

このアカデミーには約40人が在籍しており、年齢層も幅広い。アカデミー入会も特に規定がなく、野球がやりたい子であれば誰でもウェルカムだそうだ。ちなみに道具は自前の選手もいるものの、貸し出しも可だという。

筆者も実際にアカデミーの様子を見て驚いたのは、練習メニューが確立されていたこと。

ウォーミングアップは、軽いランニングから始まって体のどこの部位に効果的なのか1つ1つ説明しながら、約30分かけて入念に体を温めていた。その後はキャッチボール、守備練習、打撃練習が基本的な流れとなる。

アカデミーはコーチ5人体制であり毎回、約20人ほどの選手が参加している中で、1人1人丁寧に指導していた姿が印象的だった。

誰1人として独りぼっちにさせない受け入れ体制と、参加者全員が心の底から野球を楽しんでいる姿はなかなか日本国内では見ることができない光景だと思う。

ニカラグアで女子野球は首都のマナグアだけではなく、地方でも行われいる。現在の課題としては、マナグアのようなアカデミーはまだ存在しておらず、練習環境に格差があることだ。

これを受けて現地のコーチは「今度はより、地方でも女子野球の輪を広げたい」と意気揚々だ。

今回のニカラグア滞在中は11月12日に地方からも女子野球チームを集めてトーナメント戦を開催した。その様子はまた次回、お届けする。

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